負傷による視機能障害 …顔面のケガに伴うリスクとは?

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負傷による視機能障害 …顔面のケガに伴うリスクとは?

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負傷による視機能障害 :網膜振盪症

安川選手は網膜振盪症(もうまくしんとうしょう)と診断されました。網膜振盪症は比較的軽い打撲で生じ、目の奥が内出血に似た状態になります。網膜の中心に位置し、視力にとって重要な役割を果たす黄斑部が乳白色に混濁し、微量な出血をともなうことがあります。一時的に目がかすむ、視野の一部が欠けるといった症状が出ますが、多くは2週間ほどで自然治癒を期待できます。

 

負傷による視機能障害 :網膜剥離と外傷性視神経症

ここからは、実際に安川選手に起きたわけではありませんが、状況からその可能性があった疾患についてふれておきましょう。まず、網膜剥離は網膜が剥がれてしまう疾患です。目に繰り返し衝撃を受けるボクサーに起きやすいことでも知られています。対処が遅れると失明の危険がありますが、近年では網膜硝子体手術という、眼球の中に微小な器具を直接入れて行う手術が進歩し、治療成績が向上しています。網膜剥離を克服し、現役復帰したスポーツ選手も少なくありません。

 

視神経は、視神経管というトンネル状の細い骨の穴を通って頭蓋内に入ります。眉毛の外側を強く打撲すると、視神経管内の視神経が圧迫されるなどして外傷性視神経症が引き起こされることがあります。顔面への打撃によって生じやすい外傷として、まず、鼻や歯の骨折、眼窩底骨折などは連想しやすいはずです。これに比べ、比較的丈夫なイメージのある頭部に近い眉毛部については、注意が向きにくいのではないでしょうか。

 

 

私たち一般人が素手の顔面パンチの応酬を経験することはまずないでしょう。ただし、球技などのスポーツや交通事故で顔面を負傷すれば、同様に視機能が障害される可能性があります。備えあれば憂いなし。「顔面は打たない、打たれない」を頭の片隅に留めておきましょう。

 

 

監修:岡本良平医師(東京医科歯科大学名誉教授)

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