気温差が身体に与える影響 :日照不足と低温が続いている理由 冷涼天候を健康に乗り切るには?

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気温差が身体に与える影響 :日照不足と低温が続いている理由 冷涼天候を健康に乗り切るには?

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気温差が身体に与える影響 :日照不足と低温の原因について

 

この天候不順の主な原因は「秋雨(あきさめ)前線の停滞」と、ロシアのバイカル湖付近から断続的に南下する「冷たい高気圧(大陸性寒帯気団)」からもたらされる下層寒気です。

 

秋雨前線は、9月〜10月初めにかけて「夏(の空気)と秋(の空気)の境目」に形成される停滞性の前線で、台風や熱帯低気圧のような「暖かく湿った空気の大きな塊」が日本付近まで北上した場合などに現れて活発化しますが、今年は8月11日頃に現れた前線が、それ以降ほとんど消えることなく日本の南岸に停滞したまま現在に至っています。

 

このような前線の停滞と顕在化を支えているのが、大陸から南下する「冷たい高気圧」です。この冷たい高気圧はバイカル湖付近から次々に南下しており、その経路はまるで「冬の高気圧(シベリア気団)」を見ているようです。

 

果たしてこれは秋の空気なの? という疑問はありますが、冷たい高気圧からもたらされる「冷涼な空気(下層寒気)」によって秋雨前線が 押し下げられたまま停滞していると考えられます。

 

秋雨前線の北側(北海道と本州の大部分)は、上述の「冷涼な空気」により曇りがちの不安定な天気が続いています。また、秋雨前線付近の本州南岸から四国・九州では前線帯に沿って分厚い雲域が形成され、ほとんど停滞した状態が続いています。前線帯では天候不順のほか、特に前線上を低気圧が通過するような場合には「大雨や落雷、竜巻などの激しい突風」のような顕著な気象現象への注意も必要です。

 

 気温差が身体に与える影響 :意識的な「メリハリ」で対応力を高める

 

冒頭で東京の例を挙げたように、最近の約3週間にわたる低温傾向を平年差で示すと、「深刻と言うほどのレベルではない」ことがわかります。しかし、問題は「それまでの暑さからの気温較差」にあります。

 

例えば低温傾向に陥る前の7月20日~8月9日の3週間などは熱中症による搬送者数が合計で3万人を超えていました。そのような「厳しい暑熱環境」に対して私たちの体内がようやく適応(暑熱馴化)したところに、今度は「外気温が平年よりも低い天候」が続くようになると、体内では低温から身を守るために「交感神経の興奮」を高めて対応しようとします。

 

例えば低温により皮膚の立毛筋や毛細血管が収縮すると、その刺激がフィードバックされて体内の交感神経系全体に興奮が伝わり、これによって喘息・腰痛・関節痛などの慢性疾患や、古傷などに見られる神経障害性疼痛が悪化する場合があるのです。

 

特に日照不足と低温が重なる場合、太平洋側の平野部などでは1日の最高気温と最低気温の差が小さくなり「終日にわたって肌寒い状態」が長期間続く傾向があります。上述のような慢性疾患や痛みを抱える人は、低温環境に身体を長時間さらすことは避けなければなりません。

 

疾患の有無にかかわらず、長期の低温などに伴う交感神経の興奮を鎮めるには「暖める」のが最も効果的です。例えば…入浴時はシャワーではなく40℃程度の温かい湯に長めに浸かる(熱い湯は逆効果)。温浴効果の高い入浴剤を使ってみる。就寝の際には体の冷えやすい部位に「湯たんぽ」をあてる……などの工夫をしてみてください。

 

また、偏った天候に体内環境を上手に適応させるには、1日の中に運動する時間を設けるなど、「生活の中にメリハリをつけること」で対応力が高まります。激しい運動を行う必要などなく「毎日のラジオ体操」でも十分な効果が期待できます。軽い運動を続けることで(外からではなく)体の内側からの発熱量を増やし、天候不順によって陥りがちな自律神経の乱れを修正します。

 

日々の生活パターンへの「ひと工夫」で、天候がスッキリしない時期を上手に乗り切ってください。

 

<執筆>
●佐藤 敦(さとう・あつし)
防災士、気象予報士。2005年12月25日に発生した「JR羽越線特急いなほ脱線転覆事故」を機にブログ『気象・歳時・防災コラム』を開設し、各種自然災害の分析や風評発生の仕組みなどを解説している。(一社)日本気象予報士会会員

http://blogs.yahoo.co.jp/otenki_bosai

 

<医療監修>
●坂本 忍(医学博士、公認スポーツドクター、日本オリンピック委員会強化スタッフ)

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