「うつ病」を克服した経営者が語る復活までの2年半の軌跡~その20 急回復の鍵は、客観的なデータと丁寧なカウンセリング!

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「うつ病」を克服した経営者が語る復活までの2年半の軌跡~その20 急回復の鍵は、客観的なデータと丁寧なカウンセリング!

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うつ克服の4ポイント

この先生の治療を受け、私なりに体験的に感じたうつ克服のキーポイントをまとめると、以下の4つに集約されます。
 
(1)「PEA診断」と言う客観的な指標を持った、納得度の極めて高い治療指標を持っている。
このことは、前号において、自らの治療中の数値の変化を記して説明をした通りです。正直なところ、一刻も早く日本の精神医療界に普及し、うつの早期発見を通じて予後改善と再発防止に役立つことを心から期待しています。
 
(2)患者一人ひとりの異なる状況を把握し、適切な治療(3分間診療ではない)をする。
 
この診療院は、他の病院とは違って、休診日が火曜日の午前中、金・土曜日です。休日もやっています。やはり、一患者に30分をきちんと確保するとなると、休日営業も必要なのでしょう予約制でありがら、30分程度は待つことがあります。患者の状況を丁寧にヒアリングを行う為です。
 
(3)ぶれない方針:「患者の抱える問題を突き止めることが治療成功の鍵。客観的なデータに基づき無駄な薬の使用を極力抑える」
 
治療方針として、“患者の抱える問題を突き止めることが治療成功のカギ”“無駄な薬の使用を極力抑えた診療を心がける”を掲げて、私に対してもその通りの治療をしてくれました。以下、私が体験した具体的内容を説明します。
 

自律性を育成するカウンセリングを経験し、大きな進展

体験を通して、精神疾患の治療に現在使用されている薬の多くは、病気の根本的な原因を取り去るものではないように感じています。症状を和らげるためのいわゆる対症療法的な薬が主のように感じます。
私の場合、初期の主治医の下、入院時点では自殺(京浜東北線に飛び込むこと)まで考えるほど症状が重かったので対症療法的薬を沢山飲んで症状を和らげることを優先させましたが、一方でこうした薬を長期にわたって服用することで、薬物依存の入り口まで来ていました。
 
しかし、この治療院では、「PEA」診断の数値を見ながら、診療の都度、「この薬はこんな風に減らして行きましょう・・」とそれぞれの薬の役割(効能)を丁寧に説明をしてくれます。一方、かなりの回復が見られ出したころには逆に慎重に薬を減らして行きました。30㎎、20㎎、10㎎・・と。時にもどかしくもありました。そして、薬が全くのゼロになり、今度は5ヶ月後に顔を出してくださいと言われたのは昨年の12月に入ってからでした。それも、最後の「PEA診断」の数値を確認してから慎重に。うつになって3年の時が流れていました。
 
「趣味を持ってください。」「何も考えずに、眠い時は寝てください。」そうして、「とにかく今は、枯渇したエネルギーの充填に専念してください。」「沢山薬を飲んで!」こう言った言葉を繰り返してきたこれまでの主治医とは大違いでした。ここに来なければ、その後も長い間、薬物治療を受け続けて、今の完全復帰はなかったと思えます。うつにおける薬の使用を否定するのではなく、効果的でわかり易い服用が非常に重要であるというのが、私の結論です。
 
もうひとつ、先生が診療で重点をおいていたのは、カウンセリングを通して“患者の問題を見抜き、病気の原因を突き止める”ことでした。そのために診療時間中は徹底して問いかけられた記憶があります。私の場合、特に治療開始当初は、こちらが話すと言うよりはむしろ、先生が投げかける質問に答えていき、病気の根底にあるさまざまな問題や要因を探る事が出来たような気がします。
 
当初は、自分の心(資金繰り失敗⇒予測される人生の完全敗北から逃げたことで、薬を通じて真性の「うつ病」になってしまった…との後悔の念と将来に対する不安感を隠して、自らのプライドを守ろうとする防衛機制(ぼうえいきせい)が働き、時間をかけて、先生に解きほぐしていただいたのです。
結果的には、「PEA診断」で立派なうつの数値が出て、先生との会話を通じて、

 
・そこまでの働き方をしていたら誰でもうつになる。
 

・経営の能力の問題ではないので逃亡者でも、敗北者でもない。また、犠牲者(人のせい)でもない。
 

・自殺を思いとどまらすべく健全なアラーム信号(体の不調の連続)を出してくれ、結果、それを防いでくれた健全な肉体に感謝が必要。
 

・何も失っていないんだから、生きる力はあるんだから、リスタートを切ればいいだけ。
と納得し、自らうつに立ち向かうことが出来たのでした。
 
振り返ると先生のカウンセリングは、患者に、なぜ自分が病気になったのかに気づかせ、なにを治したらどう変わって、どういう未来が拓けるのかを自覚させるものでした。まさに、「自律性」の育成です。通常、医者もカウンセラーも患者に対して、具体的アドバイスはしませんし、以前診ていただいた先生のように3分間診療では、丁寧に患者の問題に対処していくのは物理的に無理です。
 
心の病を抱える患者の中には、いろいろな物事の決断ができないという方がたくさんいるはずです。解決策が見つからない中で決断を迫られるも、やはり答えが見つからなくて決断できない…こういった状況の堂々巡りこそがうつ病だと思います。先生との会話を通して、問題を把握し、自分で決めて、行動して、行動に伴うリスクを背負う…ということを体感できた私は大変幸運でした。
 
このように、「PEA診断」を通じた外苑前の先生との出会いにより、うつからの回復は加速していきました。次回は、もう少しこのあたりの心と体の動きをお話ししたいと思います。
 
 

<執筆>
村井哲之
広島大学 政治経済学部 経済学科卒
法政大学環境マネジメント研究科修士課程中退
事業構想大学院大学 研究員
環境プランナー
リクルート、第二電電(現KDDI)等を経て、現在、日本初の廃棄のコンシェルジェ
総合商社 (株)イブロン代表取締役

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