「なぜ温泉は身体に良いのか」を徹底解説

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「なぜ温泉は身体に良いのか」を徹底解説

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温泉の成分ごとの効果とは?~泉質別適応症~

 
医学的に治療効果のある温泉水のことを「療養泉」といいます。
 
療養泉は主成分によって分類されていて、その泉質による効果を「泉質別適応症」とよんでいます。泉質には多くの種類がありますが、今回はそのうちの一部をご紹介します。
 
1.単純温泉
単純温泉は刺激が少なく、誰もが入ることのできる温泉です。日本にも多くあります。
 
単純温泉のうち、pH8.5以上の温泉を「アルカリ性単純温泉」といいます。
 
疾患ではないため適応症としての効果には記載がありませんが、アルカリ性のお湯は石鹸で洗ったときのように皮脂を乳化し、皮膚の表面である角質を柔らかくするため、肌がすべすべになるといわれています。そのため、別名「美人の湯」とよばれることもあります。

 
 

2.塩化物泉
塩化物泉は海水の成分に似た塩分を含んでいて、肌についた塩分が入浴後の発汗を抑えてくれるため、保温保湿効果が期待できます。これによって入浴後も肌の乾燥や汗の蒸発を防ぎ、湯冷めもしにくくなります。
 
さらに、保温保湿されることで、きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥などに効果があるといわれています。

 
 
3.二酸化炭素泉
二酸化炭素泉は、二酸化炭素、つまり炭酸ガスを含む温泉です。科学的に、血管拡張作用があることが証明されています。
 
血管拡張によって血液循環がよくなるため、きりきず、抹消循環障害、冷え性、自律神経不安定症に効果があるといわれています。

 
 
4.硫黄泉
硫黄泉は、ゆで玉子が腐ったような臭いがする泉質です。いわゆる温泉の臭いとして多くの人が想像する臭いですね。硫黄泉は臭いからも分かるように、刺激が強い泉質になります。
 
その刺激のある泉質は、角化症や慢性湿疹などの慢性の皮膚疾患に効果があるとされ、昔から皮膚の治療にも用いられてきたそうです。
 
最近では、硫黄泉のなかでも「硫化水素型」に、血管拡張作用があることが証明され、高血圧や末梢循環障害に効果があるといわれています。刺激が強い泉質ですので、とくに皮膚の弱い方は、身体についた温泉成分をシャワーなどで洗い流してから上がるようにしましょう。
 
 
5.酸性泉
酸性泉は酸性度の高い温泉で、刺激の強い泉質になります。その酸性の温泉は、皮膚疾患であるアトピー性皮膚炎、尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)、表皮化膿症などに効果があるといわれています。
 
硫黄泉と同じく刺激が強いため、湯上り時には身体についた温泉成分を洗い流すことが必要です。
 

 

温泉が身体に悪影響を及ぼすことも!?

 
身体に良いことが多い温泉。ところが、逆に温泉が身体に悪い影響を及ぼす可能性もあります。
 
温泉では「適応症」などの効果とともに、「禁忌症」として1回の温泉入浴又は飲用でも悪い影響を及ぼしかねない病気・病態が記されています。
 
禁忌症には次のものがあります。

 
・発熱があるような病気のとき
・むくみが出てくるような腎臓の病気のとき
・目に見える出血があるとき、消化管出血をおこしているとき
・進行した悪性腫瘍や重い貧血で身体が著しく衰弱しているとき
・慢性病の状態が悪くなっているとき
・動くと息苦しくなるような重い、心臓や肺の病気のとき

 

このような状態にある方は、温泉が逆に身体の負担となることがあります。「温泉分析表」には、適応症だけでなく、禁忌症と注意事項も記されています。
 
きちんと読んで理解した上で、温泉の効果を活用してみましょう。
 
 
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
 

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