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双極性Ⅱ型の発見
アメリカ精神医学会発行の『DSM-5:精神疾患の分類と診断の手引き;最新版』は、2013年に19年ぶりに大改訂されました。
以前のDSM-5では、うつ病と躁うつ病はいっしょに、気分障害というカテゴリーに属していました。それが最新版では、単極のうつ病は「抑うつ障害群」に、躁うつ病は「双極性障害群」と、それぞれ独立したカテゴリーに分かれました。
つまりかつては「同じ病気の違ったカタチ」とみなされていたのが、最新版では「異なる病気」だと認識が変わったことを意味しています。
ところで、双極性障害と一口にいってもDSM-5ではⅠ型とⅡ型とに分けられています。
「そう」と「うつ」の両極をエピソードして発症する双極性障害。「うつ」に関してはⅠ型もⅡ型も変わりません。
一方「そう」に関しては違いがあります。Ⅰ型では従来通りの「そう状態」をきたすのに対して、Ⅱ型では「軽そう状態」に留まります。
つまりⅠ型のそう状態を「スーパーハイ」と呼ぶなら、Ⅱ型では「ちょっとハイが続く」くらいなのです。
ちなみに、2015年に日本うつ病学会・双極性障害委員会が発行した『双極性障害(躁うつ病)とつきあうために』には、『軽躁状態では、あまり眠らなくても元気で、きげんがよく、友達との交流も活発で、はげしく怒ったり、妄想がでたりすることもないので、』と記述されています。
このように、かつてはⅡ型の人は「ポジティブな人」と見られたり、普通の人だったらめげてしまうような厳しい状況でも、精力的に活動して問題を克服したりして、さまざまな分野でリーダーとなっているような人も多かったようです。
そのため、長らくそれが病気のせいだとは認識されていなかったという経緯がありました。
ポジティブが良いとは限らない
双極性Ⅱ型を病気だと認知したことは、ひと頃の「ネガティブ=弱い・悪い」「ポジティブ=強い・良い」といった価値づけに疑問を呈したのではないでしょうか?
なにしろ様々な分野のリーダーとして実績を上げていた人が、実は病気だったということなのですから…。
「ポジティブな生き方」や「ポジティブな考え方」そして「ポジティブでネアカな人間関係」こそが歓迎される気風が、最近ではちょっと変わってきたようにも感じられます。
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