あまり知らない「不育症」について、専門家が詳しく解説

Mocosuku(もこすく)
  • あまり知らない「不育症」について、専門家が詳しく解説

  • Mocosuku(もこすく)
医療資格者や専門家だけの記事を配信

あまり知らない「不育症」について、専門家が詳しく解説

公開日時

問題がなくても流産してしまうことも

 
流産の原因はいくつかありますが、その多くは胎児に偶然起こった染色体異常といわれています。
 
「流産は稀なこと」と思っている方もいるかもしれませんが、実は不育症でなかったとしても、1回の妊娠で15~20%ほどは流産する確率があるのです。
 
これは、両親に異常がなかったとしても、染色体異常が起こることがあるからです。

 
そのため、流産を1回経験したからといって、即不育症ということにはなりません。では、どのような原因があると、不育症になるのでしょうか?

 
 

不育症になるのはなぜ?

 
流産を2~3回くり返す場合は、まずは病院で検査が行われます。
 
血液検査や超音波検査などの基本的な検査のほか、MRI検査や卵管造影検査などが行われることもあり、これらの検査を通して、原因を探っていきます。
 
不育症の原因としては次のことが考えられます。治療法もあわせてみていきましょう。
 

夫婦の染色体異常(偶発的なものを除く)

先ほど説明したような偶発的な染色体異常による流産を1度経験するだけでは、不育症とは呼びません。

 
ところが、何度も流産をくりかえす場合には、偶発的な染色体異常ではなく、夫婦のどちらか(もしくは両方)の精子や卵子に染色体異常が起きていることが考えられます。
 
・治療法
染色体異常であることが判明した場合には、根本的な治療法はありません。ただ、着床前診断を行うこともあるようです。

 
着床前診断は、体外受精をするときに行われるもので、体外受精した受精卵を女性の身体に戻す前に染色体検査を行い、異常がないか確認する検査です。
 
これを行うことで、流産のリスクを下げることを目指します。
 
 

子宮の形態異常

子宮の形に異常がある場合、胎児が育つことができず、流産や早産をくりかえす原因となります。また、受精卵が着床する妨げになることもあります。
 
・治療法
子宮の形態異常が見つかった場合は、タイプによって手術療法が行われることもありますし、そのまま経過観察をすることもあります。
 

内分泌の異常

内分泌とは、いわゆるホルモンのこと指します。ホルモンの分泌に異常がある場合にも、流産をくりかえす可能性があります。
 
たとえば、甲状腺機能障害、糖尿病などです。ホルモンの異常が染色体の異常を引き起こし、流産をくりかえす原因になっているという報告があります。
 
・治療法
内分泌の異常の場合には、根本的な病気の治療が行われます。
 

血液の凝固異常

全身の血液が固まりやすくなる病気(例:抗リン脂質抗体症候群)などがあると、血液が固まって血管を詰まらせる血栓症が起こりやすくなります。
 
とくに、骨盤まわりに血栓ができると、血流が悪化して、流産や死産のリスクが高くなるといわれています。
 
・治療法
抗血栓療法として、薬物療法が行われることがあります。
 
 
このように、検査によって不育症ということが分かった場合には、原因にあわせてその後の方針が考えられます。
 
妊娠できたとしても流産を2回以上くり返している場合は、一度病院で不育症の検査を受けてみましょう。
 
 
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
 

スポンサーリンク

先週よく読まれた記事

ヨガはどうしてカラダに良いの? 医学的に掘り下げてみよう

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 昨今のヨガブームにより、趣味としてヨガを楽しまれている方も多いのではないでしょうか。 「なんとなく健康に良さそう」というイメージの強いヨ...

不眠症ならぬ「過眠症」をご存じですか? 症状や原因とは

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ あなたは自分の睡眠に満足していますか? 睡眠の悩みと聞くと、多くの方が思い浮かべるのは「不眠症」でしょう。 しかし、「過眠症」で悩んでい...

朝起きたら首が… やっかいな「寝違え」の原因と治し方

執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師) 医療監修:株式会社とらうべ 「朝起きたら首が痛い・・・寝違えたかも!?」 このような経験、どなたも一度はあるでしょう。 そもそも寝違えはどうして...

冷え対策に、「温活」をはじめよう!

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 婚活、妊活、終活など、最近は「〇活」というコトバがよく使われています。 「温活」もそのうちのひとつで、今や書籍やインターネットなどあちこ...

「失神」と「睡眠」の違い どこに注目すればいい?

執筆:南部 洋子(看護師) 監修:坂本 忍(医師、公認スポーツドクター、日本オリンピック委員会強化スタッフ) 「失神」と「睡眠」の違い、見た目ではなにがどう違うのか、わかりませんよね。 例えば、飲み会...

つった! 寝ていたら足がつるのはどうして?対処法は?

執筆:山村 真子(看護師・西東京糖尿病療養指導士) 夜寝ている時、突然足がつってしまい、激痛で目が覚めた! そんな経験をされた方、いらっしゃいませんか? 突然起こる足のつり。どうしてこのようなことが起...

働く人に増えている「適応障害」 原因となる3つのパターン

執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター) 医療監修:株式会社とらうべ 環境にうまくなじめないことから、落ち込んだり、意欲や自信を喪失したり、イライラして怒りっぽくなったり、体調面が悪くなったり、場合...

【妊娠と出産】新着記事

妊婦さんはとくに気をつけたい、チーズなどにいる細菌「リステリア」

妊婦さんはとくに気をつけたい、チーズなどにいる細菌「リステリア」

執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師) 医療監修:株式会社とらうべ 妊娠中はお腹の赤ちゃんのためにしっかりと栄養を摂りたいもの。 しかし、なかには妊婦さんが控えたほうが良い食品もあり...

2019/08/02 18:30掲載

10人に1人とも言われる「産後うつ」は、予備知識も大事

10人に1人とも言われる「産後うつ」は、予備知識も大事

執筆:座波 朝香(助産師・保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 産後のメンタルヘルス不調、いわゆる「産後うつ」は、今や10人に1人は経験するとも言われています。 出産という大仕事を果たした後...

2019/03/13 18:30掲載

妊活中のサプリメント… 選ぶポイントと正しい活用法

妊活中のサプリメント… 選ぶポイントと正しい活用法

執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー) 医療監修:株式会社とらうべ 赤ちゃんを授かりたいと願う女性は、「食べるもの・飲むもの」には特に気を遣われると思います。 ...

2018/08/10 18:30掲載

妊娠中の「つわり」は、旦那さんへもうつる!?

妊娠中の「つわり」は、旦那さんへもうつる!?

執筆:座波 朝香(助産師・保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 妊娠中にさまざまなことが原因で体調不良をもたらす「つわり」。 妊婦さん特有の症状というイメージが定着していますが、実は旦那さん...

2018/04/20 18:30掲載

妊娠も出産もしていないのに母乳が…  どうして?

妊娠も出産もしていないのに母乳が… どうして?

執筆:青井 梨花(助産師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 多くの方は「母乳とは赤ちゃんを育てるためにお母さんが生産するもの」と思うでしょう。 ところが、妊娠もしていないし、出産後でもないのに、...

2017/12/25 18:30掲載

出産の痛みを緩和する「無痛分娩」 リスクはないの?

出産の痛みを緩和する「無痛分娩」 リスクはないの?

執筆:座波 朝香(助産師・保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 日本でも無痛分娩へのニーズは年々高くなり、関心を持つ方も増えてきました。 今回は、無痛分娩のなかでも一般的な方法とされる「硬膜...

2017/11/29 18:30掲載