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アルコール依存症治療の4つのステージ
アルコールや薬物など「物質依存症」については、長い治療の歴史もあって、現在では治療法がシステム化されています。一般的に次の4つの段階を経て、入院や通院による治療が進められます。
導入期
受診段階。本人や家族が依存症を理解したうえで回復を決意し、家族や職場などが協力を覚悟する治療の初期です。
とくに暴力や自傷行為などの精神症状が出ている場合は、強制的に断酒をさせるために薬物療法を用いることもあります。
解毒期
本人が同意して断酒をします。軽ければ通院、離脱症状などをともなう重症であれば入院します。
一時的に心身の状態が悪化するため休養も必要です。
リハビリ前期
回復への動機づけの時期です。離脱症状から解放され比較的安定します。
自助グループ(後述)への参加も始まります。
リハビリ後期
社会復帰と生活の安定期。入院患者の場合は、外泊するなど仕事や日常生活に戻るための準備期です。
本人もまだ自信がなかったり、受け入れる側にも困難があったりして、スリップと呼ばれる再飲酒などのリスクもあります。
本人も家族も根気を要する時期ともいえます。
このように、導入期から社会復帰まで、薬物療法、心理療法、作業療法、レクリエーション療法、勉強会、自助グループへの参加、リハビリテーションなど、さまざまなプログラムが提供されます。
とはいえ、厚労省によると日本の場合、断酒率は治療後2~3年で28~32%、5年以降では20~30%という数値が示されています。
アルコール依存症の社会復帰がいかに難しいか、如実に物語っている結果といえるでしょう。
また、良好な転帰を果たしているのは、高齢・配偶者がいる・仕事についている・治療前の飲酒量が少ない・入院回数が少ない・治療への姿勢がよい・人格障害を持たない・リハビリテーションに励んでいる、などのケースであると報告されています。
自助グループの意義:悪しき依存から良好な依存へ!
アルコール依存症の代表的な自助グループとしては、断酒会、AA(アルコホーリクス・アノニマス:匿名断酒会)、NA(ナルコティクス・アノニマス:匿名断薬会)などがよく知られています。
患者が主体となり、同じ悩みを持つ人たちが集まって、話し合ったり励まし合ったり、新しい生き方を模索したりします。
治療は、「断酒」という絶対に依存をしない方法によって始まります。
リハビリ期に入ると、自助グループでの活動を通して、悪しき依存ではなく良い依存としての「寄り合い」を体験学習します。こうした治療の転換は、患者さんにとって重要な意味を持つのでしょう。
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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