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共働き家庭が増える中で、進まない「家事シェア」
このほかにも、脱ぎ捨てられた服を洗濯かごに持って行く、裏返しになった服や靴下をひっくり返す、使い終わったティッシュの箱やトイレットペーパーの芯を捨てて取り替える、リサイクルゴミに出すためにビンやペットボトルのキャップやラベルを剥がして中をすすいで乾かすなどなど…「名もなき家事」は枚挙に暇がありません!
時に、日本の共働き世帯は、全国の夫婦の48.8%にまで増加しました(総務省統計局「平成29年就業構造基本調査」)。
にもかかわらず、日本の男性の家事・育児時間はいまだに世界の先進国のなかでも最低レベルです。
その背景として、個人においても社会においても根強く残っている「男は仕事、女は家庭」という昭和的な考え方が指摘されています。
今や子育て世代の大半の男性は、中学高校の家庭科を必修授業として受けているのですが、その親世代から受け継がれる性別役割分担意識、また、男女の賃金格差や長時間労働などの問題も影響して、家事を「手伝う」ことや育児に「参加する」といった意識改革の方は遅れていると言わざるを得ません。
このように、「できていて当たり前」とされる家事がもっぱら女性に押し付けられている状況を「家事ハラ(家事労働ハラスメント)」であると問題視する声も見られます。
家事の負担を減らす提案
本来、家族全体の営みに関わる家事は、誰か一人が負担を引き受けるのではなく、一人ひとりが自分ごととして家事を「シェア」する、という考え方が妥当です。
家庭の状況にもよりますから一概にはいえませんが、家事シェアのためには、たとえば次のようなポイントが大切になるでしょう。
家事を「見える化」する
自分以外の家族が家事をしてくれない…とぼやきながらも、実は具体的にどのようなタスクがあるか家族と共有できていない人は、案外多いと思います。
また、「自分でやったほうが早い」という思考が勝っているかもしれません。
それでも、改めて共有する時間をとってみると、家族も自分も認識していなかった「名もなき家事」がたくさん見つかるはずです。
家事を年収に換算するシミュレートツールなども取り入れて、ゲーム感覚で家事について家族の話題にしてみてもよいでしょう。
家事の効率化を家族間で協議する
食器は手洗いではなく食洗機で洗う、乾燥機付きの洗濯機にして乾かす手間を省くなど、家電の導入も方策の一つです。
洗濯物を取り込んでから箪笥にしまうまでの動線を見直して、工数を減らすといった工夫もできます。
惰性によってそれぞれのタスクに生じる動作が非効率的になっていないか、家族皆で見直してみましょう。
人は自ら分析してやり方を考えた決まり事については、積極性が増し自然と体も動くものです。
家族にも自分にも完璧を求めない
有能な人ほど完璧主義といわれますが、家族にも同じように完璧を求めるのは窮屈なことです。
家事のジャンルは幅広く、得手不得手もあります。
任せられるところは任せる、どうしても譲れないところは自分で思う存分手をかけるなど、柔軟に対応しましょう。
一番忘れてならないのは、家族皆が気持ちよく過ごせる…ということです。
家事について話し合いを持つ機会が多い家族ほど、家事分担の満足度は高いといわれています。
この時、誰かひとりがルールを決めるのではなく、家族全員が納得できるやり方を皆で模索して話し合う、というプロセスがとても重要です。
「名もなき家事」が「見える化」されると、これまで大きく「洗濯」や「掃除」といった括りで捉えていたタスクの解像度は格段に上がります。
それによって「洗濯はママの仕事」と丸投げするのではなく、パパが洗濯機を回して、洗いあがったときに手の空いていたママが干す、乾いた自分の洋服は子どもが自分でたたんで箪笥にしまうなど、気持ちよく家事のシェアができるようになるでしょう。
初めは上手くいかないかもしれませんが、問題が起こったらその都度家族で話し合い、カスタマイズすればよいのです。
「我が家の家事プロジェクト」推進は、家族の絆を強くするエッセンスにもなると思います。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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