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公表までのプロセス
マタハラを行った事業主は直ちに公表されるわけではなく、再三にわたる是正の求めに応じなかった場合に限られます。
具体的には、次のようなプロセスを経て公表に至ります。
1.違法な取扱いを是正するよう「助言」し、是正を求める(都道府県労働局長による対応)
2.「指導書」を交付し、違法な取扱いについて是正を求める(都道府県労働局長による対応)
3.「勧告書」を交付し、違法な取扱いについて是正を求める(都道府県労働局長による対応)
4.厚生労働大臣名の勧告書を交付し、違法な取扱いについて是正を求める(厚生労働大臣による対応)
このように「助言」「指導書」「勧告書」、さらには厚生労働大臣名の「勧告書」の順に、是正の要求を段階的に強めていき、最後まで是正報告がない場合に、事業主が実名で公表されます。
問題の医院に対しては塩崎恭久厚労相が7月、大臣による初の勧告を行ったにもかかわらず、解雇を撤回しなかったといいます。その際、「(男女雇用機会)均等法を守るつもりはない」との発言があったと報道されています。つまり、上記プロセスにおける最終的な是正の求めにも応じなかったかたちです。
これまでも表に出なかっただけで、マタハラによる不当な扱いを受けて泣き寝入りしていた女性は少なくないはず。
違法であるにもかかわらず、「他もやっている」「背に腹は代えられない」「皆、我慢している」というように、あたかも仕方のないことのように考え、それで通用してしまうこともあったでしょう。しかし、今回の実名公表によって、「社会はマタハラを許さない」ことが示されたのです。
今回、妊娠を理由に解雇された女性職員は「まだ働きたい」との訴えを院長が認めなかったため、茨城労働局に相談したといいます。相談した結果、必ず実名公表に至るわけではありません。
事業主が是正の求めに応じて不当な扱いを撤回する可能性もあります。「マタハラかも?」と思ったら、ひとりで悩まず、都道府県の労働局に相談しましょう。
【参考】
・厚生労働省『男女雇用機会均等法第30条に基づく公表について』(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000096409.html)
・社会保険労務士事務所 関西労務管理研究所『「妊婦はいらない」茨城の医院“マタハラ”で初の実名公表』(http://www.kansairoumu.com/2015/09/05/%E5%A6%8A%E5%A9%A6%E3%81%AF%E3%81%84%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84-%E8%8C%A8%E5%9F%8E%E3%81%AE%E5%8C%BB%E9%99%A2-%E3%83%9E%E3%82%BF%E3%83%8F%E3%83%A9-%E3%81%A7%E5%88%9D%E3%81%AE%E5%AE%9F%E5%90%8D%E5%85%AC%E8%A1%A8/)
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