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統計に見る 乳がんの生存率
がんと診断された場合に、治療によってどの程度の生命を救えるかを示す指標が「5年相対生存率」です。乳がんの場合は次のようになります。
・乳がんの5年相対生存率
1期 99.8%
2期 95.2%
3期 78.6%
4期 30.5%
※(公財)がん研究振興財団「がんの統計'14」より
統計で見る限り、乳がんの生存率は高めであることが分かります。北斗さんは2期と診断されているので、統計に当てはめるなら95.2%となります。また、「3期に近い2期」ともされていることを踏まえ、仮に3期として考えるなら78.6%になります。当初の報道にあった50%が当てはまるのは、リンパ節転移を伴いしこりが5センチをこえる3期の中でも悪い方で、他臓器への転移が認められる4期に近い状態と考えられます。ただし、統計はあくまでも集団としての割合を示すもので、個々のケースの生存率を正確に予測するものではありません。
がんの「顔つき」といわれる要素
しこりの大きさや数以外にも乳がんのリスクを左右する要因があります。乳がんの「顔つき」はそのひとつです。乳がんの手術後に、採取された組織を顕微鏡で観察して悪性度を調べることを病理検査といいます。同じ大きさでも顔つきの良し悪し、つまり悪性度の高い、低いの違いがあり、その程度を調べることによって診断に役立てることができます。
がんの中には正常組織に近いものもあります。がん細胞の形や大きさが均一で正常組織に近いものは悪性度が低いと考えられます。反対に、形や大きさが不ぞろいで「異型度」の高いものほど悪性度が高いと考えられます。乳がんの場合、乳腺組織の細胞と類似した比較的おとなしい腫瘍を高分化型、類似性が少なく悪性度の高いものを低分化型といいます。また、活発に増殖を繰り返す細胞も悪性度が高いと判断されます。このような違いはがんの「グレード」(病理学的悪性度)といわれ、がんの進行度や拡がりを示す「ステージ」(進行度)とは異なる尺度です。グレードの違いも、がんの再発率や手術後の生存率に影響を与えます。
乳がんは多くの女性が発症する可能性のあるがんです。北斗さんが警鐘を鳴らしたことで乳がんへの関心が高まれば、救われる人もそれだけ多くなると期待されます。一方で、とても重要な問題だけに、リスクの判断においては過大に評価すればよいというものではなく、正確さが求められます。乳がんは全ての種類のがんの平均生存率に比べ、予後の良いがんです。早期に発見すれば90%以上、場合によっては100%に近い生存率となっています。基本的なことになりますが、規則正しい生活や検診の受診など、可能な対応を冷静に続けることが大切です。
<参考>
北斗夫妻「5年生存率50%」の真意を説明 「言葉足らずで心配を…」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151004-00000064-dal-ent
執筆:斉藤雅幸(Mocosuku編集部)
監修:坂本 忍(医学博士)
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