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ベビーブームは「第2次」まで
ちなみに、上記で触れたベビーブームですが、1947年~1949年に「第一次ベビーブーム」、さらにこのとき生まれた世代の人たちが結婚・出産をした時期である1971年~1974年に「第2次ベビーブーム」が起きていますが、この時期に生まれた人々が成人となった1990年台半ば以降になっても「第3次ベビーブーム」は起こっておらず、新生児の出生数や出生率については現在にいたるまで減少の傾向がつづいています。こうした点から考えても、少子高齢化は単に人数だけの問題ではなく、社会情勢や環境などさまざまな要素が進行させている問題といえるでしょう。
「失敗が許されない社会」も原因
若年層が結婚や出産をためらう理由のひとつとして、近年の日本が「失敗が許されない」ムードの社会になってきていることがあげられます。こうした傾向を顕著にあらわしているのが、病気やケガなどで職を失い、社会のなかで孤立することで、経済的に追いつめられてしまう「貧困」の問題です。
拡大する貧困層の問題については、非正規雇用の増加や低賃金などさまざまな原因が指摘されていますが、いちど「貧困」といわれる状態におちいってしまうと、なかなか這い上がることができない社会の状況が、問題をより深刻なものにしているのも事実です。こうした「失敗すると後がない」ように思える社会状況に若年層が不安を感じるのは当然のことといえますが、このような不安感が「就職」「結婚」「出産」「子育て」などあらゆる人生の決断に影をおとし、チャレンジをためらわせてしまう側面もあるのです。
また、今月12日には厚生労働省が不妊治療への助成制度の拡充を実施することが報じられました。これは、高額な不妊治療への助成を切実に必要とする一部の人にとってはたしかに朗報とは思いますが、結婚・出産を控えた多くの若い世代に必要とされているのは、就職などでつまずいたとしても、態勢を立て直して再チャレンジできるようなセーフティネットであり、国や行政による保障や支援の制度なのかもしれません。これは、誰もが過度に失敗を恐れることなく、安心して就職や結婚、出産といった人生の重要事に臨める社会が実現しないかぎり、少子高齢化の問題を解決するのは難しいということでもあります。
<参考>
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160111/k10010367481000.html
(成人の日 東京ディズニーランドで成人式 NHKニュースWEB)
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2013/25webhonpen/html/b1_s1-1.html
(近年の出生率の推移 内閣府)
http://mama.jocee.jp/user/missileman/c7e619a7d11c3a518605
(【成人式】浦安市長が成人式で「出産適齢期は18歳から26歳」発言 ネットの女性から怒りの声多数 mama jocee)
執筆者プロフィール:井澤佑治(いざわ・ゆうじ) ライター/ダンサー。
国内外でダンス公演やワークショップ活動を展開しつつ、身体操作や食事療法などさまざまな心身の健康法を探究する。現在はダンスを切り口に、高齢者への体操指導、障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などにも携わっている。
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