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「創作的」に表現とはどういうこと?
さらに上述の定義を見ると、「著作物」とは、その表現「創作的」になされる必要があることが分かりますね。誰が表現しても同じような表現、いわば“ありふれた表現”は、創作的とはいえないのです。
レシピはアイディアを文章で表現したものですが、これは創作的に表現されたものと言えるのでしょうか。
レシピの表記を見ると、これらはおおむね共通の表現で行われています。
「いちょう切りにする」「キツネ色になるまで炒める」「もったりするまで混ぜる」等はよく見かける表現です。レシピの場合には、そのアイディアを示そうとすると、表現の幅が狭く、誰が行ってもありふれた表現になると考えられており、一般的に著作物には該当しないと言われています。
レシピを転載しても問題ない?
一般的に「レシピは著作物に該当しない」という結果となりました。
それでは、他人のレシピを転載しても法的に問題がないのでしょうか。たとえば、無断で人気料理家のレシピを集め、表現に手を加えず、新たに自身のレシピ本を出版した場合はどうなるのでしょう。
既存の法律問題解説書に酷似した法律問題解説書を出版・販売した行為の適法性が問題となった事案に関するものですが、裁判例(知財高裁平成18年3月15日判決)は、“著作権の対象とされなかった情報であっても、極めて類似した文献を執筆・発行する行為が、民事の不法行為責任を構成する場合がある”ことを示しています。
たしかに、情報の利用が法的に許されている場合、原則的には、誰もが自由にその情報を使うことができます。
とはいえ、「自由競争の範囲を逸脱した」といえるような利用行為については、制限が加えられるべきだと、裁判例は考えているのでしょう。
どのような行為が責任の対象となるかについては、その情報の価値や利用の目的方法など様々な事情を踏まえて判断がなされるため、一概に判断基準を示すことはできません。
しかし、最終的な判断基準としては利用行為が「公正な競争として社会的に許容されない」と評価されるかどうかに集約されると言えます。
私見ではありますが、上記のレシピ本出版の例などは、公正な競争としては許容されず、民事の不法行為に該当するのではないでしょうか。
執筆:荒内智美(弁護士)
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