「毒親」の影響で“自分の基準がなかった”というお話

Mocosuku(もこすく)
  • 「毒親」の影響で“自分の基準がなかった”というお話

  • Mocosuku(もこすく)
医療資格者や専門家だけの記事を配信

「毒親」の影響で“自分の基準がなかった”というお話

公開日時

毒親の影響:親の毒がけんじさんに与えた歪み

 
カウンセリングが進み、けんじさんは少し余裕を持って当時を振り返ることができるようになりました。
 
残念に思うのは、けんじさんの親は「外部の人からちゃんとしているように見えること」を気にするあまり、子供であるけんじさんの気持ちに対してはちゃんと向き合ってくれなかったということ。
 
「どこの親でも、ある程度そういう部分はあると思うんです。でも、私の場合は『ちゃんとしないことは自分の存在が否定されること』と感じるようになってしまった。その結果、自分の本当の気持ちに触れることができなくなったのかもしれません。そういう意味では、私の親にも「毒親」の側面があったのではないでしょうか」。
 
 

「自分の気持ち」という基準を持つ

 

自分の気持ちをきちんと感じ取り、それを大切にすることは自分を肯定するために必要なことです。
 
自分を肯定できなければ自信を持つこともできないし、自分なりの価値観を持つこともできません。
 
「ちゃんとしよう」と思うこと自体は悪いことではありません。しかし、けんじさんはその基準を自分の中に持っていませんでした。つまり、自分の価値観でものごとを判断していなかったために、際限のない「ちゃんとしなくては」という思いにとらわれてしまったと言えます。
 
現在のけんじさんは、「人から見てどうか」という基準もたくさんある尺度のひとつとして考えつつ、「自分がどう感じるか」を大事な基準としていこう、と考えられるようになってきたそうです。
 
 

(この事例は複数の例を基に構成しています。またプライバシー保護の観点から一部を脚色しています)
 
 
<執筆者プロフィール>
玉井 仁(たまい・ひとし)
東京メンタルヘルス・カウンセリングセンター カウンセリング部長。臨床心理士、精神保健福祉士、上級プロフェッショナル心理カウンセラー。著書に『著書:わかりやすい認知療法』(翻訳)など
 

スポンサーリンク

先週よく読まれた記事

ヨガはどうしてカラダに良いの? 医学的に掘り下げてみよう

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 昨今のヨガブームにより、趣味としてヨガを楽しまれている方も多いのではないでしょうか。 「なんとなく健康に良さそう」というイメージの強いヨ...

不眠症ならぬ「過眠症」をご存じですか? 症状や原因とは

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ あなたは自分の睡眠に満足していますか? 睡眠の悩みと聞くと、多くの方が思い浮かべるのは「不眠症」でしょう。 しかし、「過眠症」で悩んでい...

朝起きたら首が… やっかいな「寝違え」の原因と治し方

執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師) 医療監修:株式会社とらうべ 「朝起きたら首が痛い・・・寝違えたかも!?」 このような経験、どなたも一度はあるでしょう。 そもそも寝違えはどうして...

冷え対策に、「温活」をはじめよう!

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師) 医療監修:株式会社とらうべ 婚活、妊活、終活など、最近は「〇活」というコトバがよく使われています。 「温活」もそのうちのひとつで、今や書籍やインターネットなどあちこ...

「失神」と「睡眠」の違い どこに注目すればいい?

執筆:南部 洋子(看護師) 監修:坂本 忍(医師、公認スポーツドクター、日本オリンピック委員会強化スタッフ) 「失神」と「睡眠」の違い、見た目ではなにがどう違うのか、わかりませんよね。 例えば、飲み会...

つった! 寝ていたら足がつるのはどうして?対処法は?

執筆:山村 真子(看護師・西東京糖尿病療養指導士) 夜寝ている時、突然足がつってしまい、激痛で目が覚めた! そんな経験をされた方、いらっしゃいませんか? 突然起こる足のつり。どうしてこのようなことが起...

働く人に増えている「適応障害」 原因となる3つのパターン

執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター) 医療監修:株式会社とらうべ 環境にうまくなじめないことから、落ち込んだり、意欲や自信を喪失したり、イライラして怒りっぽくなったり、体調面が悪くなったり、場合...

【ハラスメント】新着記事

子育て時に発見した“自分の毒”  「毒親」からの影響

子育て時に発見した“自分の毒” 「毒親」からの影響

執筆:玉井 仁(臨床心理士) 明確な虐待を加えるわけではないものの、価値観や規範を押しつけることによって、子供を精神的に苦しめてしまう親。 いわば、自分の子供に対してモラルハラスメント(モラハラ)...

2016/12/25 21:30掲載

「毒親」の影響で“自分の基準がなかった”というお話

「毒親」の影響で“自分の基準がなかった”というお話

執筆:玉井 仁(臨床心理士) 価値観や規範を押しつけることによって子供を精神的に苦しめてしまう親を指して、「毒親」と呼びます。 毒親は、自分の子供に対してモラルハラスメント(モラハラ)を働く親とも言え...

2016/11/28 21:30掲載

「毒親」から「毒抜き」 をした女性のお話

「毒親」から「毒抜き」 をした女性のお話

執筆:玉井 仁(臨床心理士) 自分の身勝手な価値観や行動で、子供を物理的にも精神的に苦しめてしまう親。 最近ではそうした親を指して「毒親」(毒になる親)と呼びます。 今回ご紹介するのは、...

2016/10/05 21:30掲載

生きづらさや違和感の原因にも?「毒親」とは

生きづらさや違和感の原因にも?「毒親」とは

執筆:玉井 仁(臨床心理士) 「毒親」または「毒になる親」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?  これは本来子供にとって最大の理解者であり味方であるはずの親が、逆に子供に対して害をなしてしまう...

2016/09/22 21:30掲載

理由は妻のモラハラ? 「帰宅恐怖症」になる夫の心理

理由は妻のモラハラ? 「帰宅恐怖症」になる夫の心理

妻の態度や暴言に恐怖を感じ、妻のもとへ帰るのが苦痛で、自宅に帰ることができなくなってしまう夫が増えているそうです。 こうした状態は「帰宅恐怖症」と呼ばれ、新たな夫婦関係の問題として話題にのぼっているとか。 ...

2016/07/07 18:30掲載

脱「スメハラ」! 靴の臭い対策はコレで

脱「スメハラ」! 靴の臭い対策はコレで

執筆:磯部尚美(ハーバルセラピスト) 最近耳にするようになった「スメハラ」=smell harassment。 「臭いで他人に不快な思いを与えてしまう」ことです。 もしかしたら、あなたも自分が気...

2016/04/04 18:30掲載