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毒親の影響:親の毒がけんじさんに与えた歪み
カウンセリングが進み、けんじさんは少し余裕を持って当時を振り返ることができるようになりました。
残念に思うのは、けんじさんの親は「外部の人からちゃんとしているように見えること」を気にするあまり、子供であるけんじさんの気持ちに対してはちゃんと向き合ってくれなかったということ。
「どこの親でも、ある程度そういう部分はあると思うんです。でも、私の場合は『ちゃんとしないことは自分の存在が否定されること』と感じるようになってしまった。その結果、自分の本当の気持ちに触れることができなくなったのかもしれません。そういう意味では、私の親にも「毒親」の側面があったのではないでしょうか」。
「自分の気持ち」という基準を持つ
自分の気持ちをきちんと感じ取り、それを大切にすることは自分を肯定するために必要なことです。
自分を肯定できなければ自信を持つこともできないし、自分なりの価値観を持つこともできません。
「ちゃんとしよう」と思うこと自体は悪いことではありません。しかし、けんじさんはその基準を自分の中に持っていませんでした。つまり、自分の価値観でものごとを判断していなかったために、際限のない「ちゃんとしなくては」という思いにとらわれてしまったと言えます。
現在のけんじさんは、「人から見てどうか」という基準もたくさんある尺度のひとつとして考えつつ、「自分がどう感じるか」を大事な基準としていこう、と考えられるようになってきたそうです。
(この事例は複数の例を基に構成しています。またプライバシー保護の観点から一部を脚色しています)
<執筆者プロフィール>
玉井 仁(たまい・ひとし)
東京メンタルヘルス・カウンセリングセンター カウンセリング部長。臨床心理士、精神保健福祉士、上級プロフェッショナル心理カウンセラー。著書に『著書:わかりやすい認知療法』(翻訳)など
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