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いろいろな心臓病
心臓病は、1位は悪性新生物(がん)に次いで、日本人の死因の第2位となっています。
おもな心臓病を解説します。
その1.胸部大動脈瘤
大動脈は、心臓から全身に血液を送るための太い血管で、外膜・中膜・内膜の3層構造になっています。
この大動脈の壁が弱くなり、局所的に瘤のように大きくなるのが「大動脈瘤」です。大動脈が破裂すると、死に至ることが多いため、胸部大動脈瘤は怖い病気です。
ただし、早期発見・早期治療をすれば、避けることもできます。
「解離性(かいりせい)大動脈瘤」では、胸、背部の激痛をともないます。解離性大動脈瘤とは、大動脈の内膜に裂け目ができて、中膜の中に血液が入りこんでいき、外膜が一枚だけになって、破裂の危険性をともなったものをいいます。
ほかの大動脈瘤の場合は、破裂するまで無症状のものが多いです。ただし、胸の周辺の器官を圧迫すると、声が出しにくい、声がかすれる、食べものが飲み込みにくい、などの症状が現れることもあります。
大動脈瘤が破裂すると、胸や背中に痛みが現れるほか、血圧低下やショック状態に陥ります。
急激に状態が悪化し、救命処置が間に合わずに、死に至ることも多くあります。
その2.心筋梗塞・狭心症
いずれも心筋(心臓の筋肉)に血液を送る冠動脈の病気で、冠動脈の動脈硬化が原因です。動脈硬化になった血管の壁はもろく、壁の一部が剥がれてその先の血管が詰まってしまうため、血流が妨げられます。
心筋梗塞と狭心症には、次のような違いがあります。
・心筋梗塞
冠動脈が完全にふさがって心筋に血液が流れなくなった状態です。心筋は壊死し、死に至る場合があります。
胸部の激痛、締めつけられる感じ、圧迫感などの症状が現れます。
高齢者の場合、特徴的な胸痛ではなく、息切れ、吐き気など消化器症状が現れる場合もあります。
・狭心症
冠動脈が完全にふさがる前の状態をいいます。血流は完全には途絶えていないので、血流が回復すれば心筋の障害は元に戻ります。
狭心症にはいろいろな種類がありますが、代表的なものを挙げます。
・安静時狭心症
就眠中や安静時に起こる狭心症。明け方に、胸が苦しく押さえつけられます。
・労作性狭心症
階段を上がる、重いものを持ち上がる、坂道を歩く、などのときに胸が苦しく締めつけられるようになる狭心症。静かにしていると楽になるのが特徴です。
・不安定狭心症
安静時でも動いているときでも発作が起こる狭心症。心筋梗塞の前兆といわれます。
その3.心臓弁膜症
心臓には、左右心室・心房の出口に、合計4つの弁があります。その弁がうまく動かなくなった状態が「心臓弁膜症」です。
弁が硬く、開きにくい状態を「狭窄症」、弁が閉じにくくなって血液が逆流するものを「閉鎖不全症」といいます。
大動脈弁狭窄症、僧帽弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、僧帽弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症などがあります
軽症のうちは自覚症状はありませんが、次第に息切れ、呼吸困難など心不全の症状が出てきます。
その4.心房中隔欠損症
心臓の右心房と左心房の間には「心房中隔」という壁があります。その壁に生まれつき穴が開いている病気を「心房中隔欠損症」といいます。
通常、肺で酸素を取り込んだ動脈血は、左心房から右心室へ流れこみ、全身へ送り出されます。
しかし、心房中隔欠損症では、動脈血の一部が穴を通って左心房から右心房に流れ、再び肺循環に入ってしまいます。その結果、右心房や右心室の負担が増えてしまい、肺うっ血や肺高血圧を引き起こします。
先天性心疾患の約6~10%を占めるもので、男女比は1:2で女性に多いようです。
10代のうちは無症状ですが、20代後半~30代にかけて息切れや疲労、不整脈、浮腫、動悸などが出てきます。
その5.心房細動
高齢者に多く見られる不整脈です。心房内で不規則な電気信号が発生することで心房全体が小刻みに震え、心房の正しい収縮と拡張ができなくなります。
強い動悸や胸部違和感などの症状が現れます。
心臓病の予防
現在、平均寿命と健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)の差は、男性は9.79歳、女性12.93歳もあります。
つまりこの間は、何かしら医療の世話になっているということです。医療費の問題も大きく、この差を少しでも短くするのが、日本の喫緊の、そして重大な課題でもあります。
健康寿命を延ばす上で、生活習慣の改善は欠かせません。
心臓病は加齢だけが原因と思われがちですが、生活習慣に原因があるものも多く、若者や働き盛りの壮年層にとっても重大な病気だからです。
心臓病を防ぐためにも、次の生活習慣に気をつけましょう。
運動
「脚は第二の心臓」というコトバをご存じですか?
とくにふくらはぎの筋力は、下肢の静脈を刺激して、血液を心臓へ送り返すポンプの役割をしています。
このふくらはぎを鍛えるためには、歩くことが大事です。今の生活に10分プラス多く歩くことを心がけましょう。
食事
過食、脂質や塩分の摂りすぎなどに注意して、バランスの良い食事を心がけましょう。
このほかにも、健康な心臓をキープするためには、禁煙や規則正しい生活が欠かせません。
「健康ハートの日」をきっかけに、心臓に優しい生活を始めましょう。
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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