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分離脳のケースから分かった重要な事実
左半球と右半球とをつないでいる「脳梁」を、手術などによって切断し、左右の脳が切り離された状態が「分離脳」です。
もともと、病気の発作を軽減するための手術法でしたが、別の深刻な影響を与えてしまいました。
それは、分離された脳がおのおの独立したふるまいを始めたことです。
たとえば、一方の手がズボンを下げようとしているのに、もう一方は上げようとする、といった具合です。
あるいは、左目に絵を見せても見えるだけで、それが何かと認識できないこともわかりました。
これにより、
左右の脳はそれぞれ分化された機能は持ってはいるものの、別々に働いているのではない、
そして、
両方が統合されてはじめて、物事を理解するという役割を果たす、
ということが明らかになってきました。
すなわち、複雑な絵の鑑賞や、微妙な音色の聞き分けなどは、左右の脳の相互連携により理解にいたるということです。
脳神話への注意喚起:OECDの活動
人間の身体については、まだ未解明で謎の部分が少なくありません。
とりわけ、脳については画像診断による脳科学の飛躍的発展で、さまざまなことが解明されてきてはいますが、まだまだ今後の発展に大きな期待が寄せられる領域です。
それだけに、脳を利用した「俗説」も生まれやすい分野なのです。
OECD(経済協力開発機構)は、2007年「脳の理解:教育科学の誕生」と銘打った報告書に、「神経神話の一掃」という章を設けました。
その中で、神経神話の事例のひとつとして「右脳人間・左脳人間が存在する」という説も取り上げられています。
脳科学への関心が高まってきている一方で、巷には「○○で脳が活性化する」「○○を食べれば脳にいい」といった、消費者の興味をそそるようなキャッチフレーズが溢れ、脳科学が乱用されています。
このままでは脳科学全体の信頼を損ない、学術の健全な発展に支障をきたす、という危機感から、「神経神話の一掃」を掲げました。
脳を巡る怪しい研究成果や根拠の乏しい説、つまり、「神経神話」を撲滅していこう、という運動のひとつがOECDの活動です。
右脳型・左脳型も「酒のつまみ」に楽しむ程度ならよいかもしれません。
しかしながら、人間が適切に正しく理解することに対しては、誤解を招く俗説だということも踏まえておきましょう。
【参考】
・池谷裕二監修『大人のための図鑑 脳と心のしくみ』(新星出版社 2015)
・Newton別冊『脳と心』(ニュートンプレス 2010)
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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