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空腹とは違う「食物渇望」
お腹が空いている「空腹」は、一般には身体の栄養素が欠乏していることを示すサインとみなされます。
この「空腹」は何か食べれば満たされます。
つまり、極端にいうと何を食べても満たすことはできます。
これに対して、特定の食品を食べないと満たされない状況は「食物渇望」と呼ばれています。
食物渇望は突然起こり、時には耐えがたいほどの強い欲求になる、という特徴があります。
ですから、何か食べれば満たされる通常の空腹とは性質が異なると考えられています。
単調な食生活の繰り返しによって、食物渇望が出現しやすいという報告もあります。
また、食物渇望が起こる理由は、体内の栄養素が不足するという生理学的な根拠だけでなく、経験的な要素も関与しているといわれています。
たとえば「無性にお寿司が食べたい」という渇望は、寿司を常食とする日本人か、寿司好きの外国人だけに起こる現象でしょう。
これは、しばらく食べていないという欠乏感や刺激的な食体験が食物渇望を招いたのではないかと推察できます。
また、食物渇望と薬物依存症の類似性についても指摘されています。
近年、神経生理学などの分野において、依存症に関わるドーパミンなど脳内麻薬の働きが解明されてきました。
その見地から、食物渇望のケースも脳内の神経伝達物質が関与していると考えられています。
脳が食欲を感じるメカニズム
「食べたい」という欲求は、脳の視床下部にある摂食中枢の活動によって起こります。
摂食中枢を刺激する要因はさまざまですが、おもに次のようなシグナルがあります。
飢餓状態のシグナル
血糖(血液中の糖質量)が下がる、胃が空っぽになる、空腹を感じさせるホルモンが分泌されるなど、身体が飢餓状態(栄養補給が必要な状態)になったというシグナルが発せられ、摂食中枢が刺激されて「食べたい」という空腹感が生まれます。
感覚器からのシグナル
お腹が空いていなくても、「いい匂いがする」「心地よい音がする」「食べたいものが目に留まる」など、嗅覚や聴覚、視覚などの感覚によっても「食べたい」という欲求が生じます。
脳内物質からのシグナル
摂食中枢を刺激する脳内物質として、オレキシンやドーパミンなど複数の種類が発見されています。
オレキシンは摂食行動を促す以外にも、覚醒作用や睡眠サイクル、エネルギー代謝亢進、血圧上昇など、さまざまな生理作用に関わる物質です。
好ましい味の摂食量を増やす、いわゆる「やみつき」にも深く関与していると言われています。
一方、ドーパミンは「快楽」の感覚をコントロールします。
食べるという行為は「満足感」や「陶酔感」といった快楽の感情を生みます。
そのため、「快楽」を得るために食べるという反応を起こします。
この反応は、時にストレスを発散する快楽の位置づけで働くときもあります。
具体的には、強いストレスがかかったときに「やけ食い」や「やけ飲み」をするなどの行為です。
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