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原田病の症状と経過
次に原田病の症状とその後の経過を具体的にご説明します。
前駆症状
まず、多くは目の症状に先立って、風邪の症状に似た前駆症状が現れます。
これは髄膜炎が生じていることによるもので、微熱や頭痛、めまいや全身のだるさが出たり、頭皮がピリピリする感じがしたりします。
初期症状
前駆症状のあと、両眼の網膜が剥離して目が見えにくくなったり、充血したり、物が歪んで見えたりします。
左右どちらかにだけ自覚症状がある場合や、ほとんど視力が低下しない人もいますが、徐々に視力が低下しますので不安になります。
浦島太郎が竜宮城に行く場面は、この初期症状によって物の見え方が歪んだことをあらわしていると読み取れるかもしれません。
ただし、こうした初期症状は、治療をせずとも一度は自然に寛解します。
また、初期には内耳の炎症によって耳鳴りやめまいが起こったり、感音性難聴になったりします。
自覚のない程度の人も多くいる一方、両耳ともに聞こえなくなる場合もあります。
さらに、前駆症状と同じように髄膜炎による微熱やめまいが生じることもあります。
竜宮城に行き宴でもてなされたというエピソードは、こうしためまいの症状が引き起こした光景なのでしょうか。
後期症状
初期症状は自然に回復してきます。
物が歪んで見えるなどしていた初期症状からの回復が、やっと竜宮城から帰ってきた…という展開と重なります。
しかし、原田病では初期症状が治まったあとで炎症が何度も再発したり、引き続いたりすることもあります。
これは「あと一日、あと一日」と乙姫に引き止められる場面に重なるかもしれません。
原田病の後期には、眼球の虹彩(こうさい)に起こる軽度の炎症が多く、網膜剥離にまで至るケースはほとんどありません。
自覚症状として、充血や軽い飛蚊症などが現れます。
視力は著しく悪くなることはありませんが、長期間続く炎症によって数年から数十年をかけて少しずつ低下していきます。
眼底においては脈絡膜色素が抜けていって赤色になり、これを夕焼け状眼底と呼びます。
また、発症後6か月から数年経つと、皮膚の白斑や脱毛が生じたり、髪やまつ毛、眉毛に白髪ができたりします。
これこそが、浦島太郎が3年後に帰ってきて玉手箱をあける、ラストシーンに重なるというわけです。
原田病の検査と治療法
原田病を発症した場合、ステロイドの大量投与など副作用を伴う効力の強い治療を行います。
ですので、事前に精密検査を経て診断を確定します。
蛍光眼底造影検査や光干渉断層計、エコーなどを用いた検査や、一般的な尿検査や血液検査などを行うこともあります。
原田病の診断が確定した後、問題になる症状は炎症の繰り返しによる視力の低下です。
初期治療では、免疫細胞の誤った攻撃を止めるため、目だけではなく全身の治療を行います。
日本では、副腎皮質ステロイド薬を大量に投与する、という治療が採用されており「ステロイド大量療法」や「ステロイドパルス療法」が一般的です。
前述のとおり副作用の心配があるので通常は入院して行われます。
どちらも最初は点滴で投与し、以降は内服して様子を見ます。
この治療には早くて半年、炎症が再発するなどした場合は数年を要するケースもあります。
しかし、残念ながらこの治療を行っても2~3割の患者さんには効果がないと言われています。
このように、原田病の治療では、身体への負荷が大きいステロイドの内服が長期間継続されます。
原田病はまだまだ解明されていない部分も多く、今後より効果的な治療法が求められています。
今のところ、早期治療がよいとされていますので、もしも風邪のような症状のあとに目に違和感が出てきたら、早めに医療機関を受診しましょう。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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