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神経伝達物質セロトニンの役割
脳内ホルモンとも呼ばれる神経伝達物質は、神経細胞間のすき間(シナプス)にあって、シナプス内でさまざまな情報を伝達する役割を果たしています。
そして、神経伝達物質の働きのよさや悪さが、多様な病気に影響することもわかってきました。
たとえば、ドパミンの急激な減少により起こるパーキンソン病、ノルアドレナリンの働きのバランスが崩れることで起こるパニック障害などが明らかになっています。
同様に今回の研究で注目されたセロトニンも、精神を安定させる働きを持つ神経伝達物質として、よく知られるようになってきました。
セロトニンは興奮系のドパミンやノルアドレナリンの働きを抑制する一方で、逆に低下すると攻撃的になる、不安や抑うつ状態が高まるなどの影響があることもわかってきています。
今後への期待
今回の沖縄科学技術大学院大学の研究では、セロトニンの増減というより、セロトニンを出している「セロトニン神経」の働きに注力して実験が行われました。
行列に並びたがる心理は、同調行動によって得られる安心感や満足感がおおもとにあります。
脳科学的には、セロトニン神経細胞が活発化して辛抱強さが促進されることによって、このような行動に至るらしい…とわかってきた段階でしょう。
辛抱強く行列に並んでいられる行動には「セロトニン神経細胞の活性化」が関与しているらしい…そんな新たな推定が生まれたというわけです。
この研究は2014年8月に発表されました。
それからしばらく時間は経っていますが、人間の同調行動あるいは行列に並ぶ人たちに、セロトニン神経細胞や神経伝達物質セロトニンがどのように影響しているのか、さらに詳しく解明されるのはもう少し先になりそうです。
しかしながらこの研究がもたらす成果について、私たちが“辛抱強く”待つ価値は十分にあるのではないでしょうか。
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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