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配置換えとうつ病 : 出世のはずがストレスに
営業部への配置換えでは、昇給と研修期間後のリーダー職への昇格が約束されており、これはSさんにとって出世といえる配置転換でした。会社からの辞令を断る理由も特に見当たらず、Sさんは営業部への転属を受け入れました。しかし、営業部でリーダー職についてしばらくした頃から、Sさんは心身の深刻な不調を訴えはじめたのです。
社内では、責任感が強く生真面目な性格で知られているSさんは、営業部に配属された当初から、朝は誰よりも早く出社して、部署内の雑務をこなしていました。
しかし、そうしているうちに、いつしかSさんがこうした雑務をひとりで引き受けることが、部署内で「当たり前」になってしまい、Sさんにはそれがストレスになっていたといいます。
また、Sさんはたしかに人当たりはいいのですが、実はそれは「他人の顔色をうかがって」自分の感情を押し殺した結果であり、営業部ではSさんのそうした傾向はますます強まってしまっていたのでした。
配置換えとうつ病 : 増える酒量の反動で…
このように、不本意に自分の感情を押し殺す毎日がつづけば、ストレスがたまらないはずがありません。Sさんはもともとお酒が好きでしたが、この頃は帰宅後に毎日必ずお酒を飲まないと気持ちがおさまらなくなっていました。
Sさんは会社から帰ると、まず晩酌にビールを飲み、そのあとは焼酎やワインを泥酔するまで毎晩飲みつづけました。このように徹底的にお酒を飲まなければ、Sさんは仕事でたまったストレスを解消できないような気がしていたのです。
やがて、Sさんは二日酔いのせいで朝起きることができなくなり、仮病をつかって会社を休むようになりました。生真面目で小心なところのあるSさんは、「二日酔いで遅刻して会社に行く」ということがどうしてもできず、始業時間に間にあわないときは、会社を休んでしまうのでした。
(次回に続く)
※本文は実話をもとに脚色を交えて構成しています。実在の人物・団体とはいっさい関係がありません。
<執筆者プロフィール>
井澤佑治(いざわ・ゆうじ)コラムニスト
舞踏家/ダンサーとしての国内外での活動を経て、健康法・身体技法の研究、高齢者への体操指導、さまざまな障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などに携わる。
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