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離婚の際の財産 …
財産分与
一般的に、財産分与は婚姻中に築かれた共有財産(名義にかかわらない)を離婚の際に分けることです(清算的財産分与)。したがって、婚姻する前の財産や婚姻中であっても相続で取得した財産などの特有財産は、財産分与の対象にはなりません。
・2分の1ルール
夫がスポーツ選手で、その才能により婚姻中の財産が築かれたというような特殊なケースを除いて、原則、共有財産の2分の1を請求できます。
専業主婦で収入が無くても内助の功がありますので、共有財産の2分の1を請求できます。
ただし、家事をしない専業主婦などは2分の1よりも割合が低くなる可能性があります。
一方、離婚の理由が夫の浮気や暴力であっても多くもらえる訳ではありません(これは原則、慰謝料の問題です)。
・年金分割
年金分割の対象となるのは、厚生年金や共済年金の報酬比例部分のみです。
したがって、国民年金や企業が任意に実施している企業年金は対象になりません。
また、分割されるのは年金額ではなく、婚姻期間中の「保険料納付記録」です。
年金分割には「3号分割」と「合意分割」があります。「3号分割」では専業主婦が夫の年金に対し無条件で2分の1の分割を請求できます。
ただし、対象となるのは2008年4月1日以降の分についてのみです。それ以前の分は話し合いで決め(「合意分割」)、最大2分の1まで分割を請求できます。分割を受けても自身が老齢になるまで老齢厚生年金は支給されませんので、当面の生活には関係ありません。詳細は、年金事務所でご確認ください。
・財産分与の相場
平成25年度司法統計によると、調停離婚、審判離婚の総数は、26,798件でした。 このうち、財産分与の取決めがあったのが、8,260件(30.8%)です。1000万円以上が約1割ありますが、半数は400万円以下で、100万円以下が最も多くなっています。
・財産目録を作る
財産分与は高額になり得ますので、夫名義の財産・負債をしっかり調べておきましょう。
退職金も既に支払われたものはもちろん、将来の退職金であっても近い将来退職金を受領できる蓋然性が高ければ共有財産になります。
夫の財産隠し対策としては調停の申し立て時に、財産の処分を禁止する仮処分を申し立てるのも有効です。財産分与の合意ができたら、支払いを確実にするため、合意内容を強制執行認諾条項付の公正証書にして強制執行を容易にしましょう。
なお、ローン残があるマイホームについては法律の問題や税金の問題が絡み複雑です。弁護士と税理士のアドバイスを必ず受けましょう。
・税金
財産分与、慰謝料、養育費は現金で支払われる限り、支払った側も、受け取った側も原則、税金はかかりません。
しかし、現金以外、たとえば、マイホームを財産分与する場合、譲渡する側には譲渡所得税、受け取る側には、不動産取得税や登録免許税などの税金がかかる可能性があります。
マイホームの譲渡の場合には、税の優遇措置もありますので、税理士などのアドバイスを受けるようにしましょう。
離婚後は、日々の稼ぎの中でやりくりして生活していくのが基本です。財産分与は生活防衛のための貯金として生活費とは別に取っておきましょう。
<執筆者プロフィール>
新美昌也(にいみ・まさや)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士。1986年、中央大学法学部法律学科卒業。2004年独立。得意分野はライフプランニング。
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