自閉症スペクトラム障害(ASD) はアスペルガー症候群ではない?

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自閉症スペクトラム障害(ASD) はアスペルガー症候群ではない?

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自閉症スペクトラム障害(ASD)  とは何なのでしょうか?

長崎県佐世保市で起きた女子高生殺人事件。クラスメイトを16歳の少女が殺害したセンセーショナルな事件は世間を騒がせ、話題になりました。2015年7月13日、長崎家裁は加害者少女へ「保護処分」を決定。16歳の誕生日を迎える直前の犯行だったこともあり、この判定には賛否両論が起こっています。
加害者である少女には重度の 自閉症スペクトラム障害(ASD) などの障害があったとされています。

 

自閉症スペクトラム障害(ASD) って?

 

自閉症スペクトラム障害(ASD) は社会的コミュニケーション障害と、興味の限局が症状の特徴です。場の空気が読めず、抽象的な質問に対して答えられない、質問の意図が理解できないなどといった日常的にコミュニケーションに支障をきたします。
また、自分の興味のある分野で安心し、強いこだわりを持ちます。狭い興味の範囲内で行動することがよくあり、そこから抜けられず、些細な言動に引っかかり相手を深く追求するといったこともままあります。

また 自閉症スペクトラム障害(ASD) 、同じ発達障害である注意欠陥・多動性障害(ADHD)と見分けがつきにくいといわれています。姜昌勲医師は、かつてはアスペルガー症候群と呼ばれた知的障害を持たない 自閉症スペクトラム障害(ASD) と、注意欠陥・多動性障害(ADHD)との共通や違いを次のように指摘しています。

 

会話にまとまりがない

注意欠陥・多動性障害の患者はぽんぽんと会話が飛ぶのに比べて、 自閉症スペクトラム障害(ASD) の患者は、ひとつの話題を深く掘り下げてこだわって話す傾向があります。

 

同じ話を何度もする

注意欠陥・多動性障害の患者が、同じ話を何回もしたのを忘れているのに対し、 自閉症スペクトラム障害(ASD) の患者は、過去のネガティブな経験やトラウマにこだわり、何回も同じことを話す傾向があります。

 

空気が読めない

自閉症スペクトラム障害(ASD) の患者は、相手の意図していることが読めず、自分ルールにこだわります。自分の決めた基準に従って行動する特徴があるのに比べ、注意欠陥・多動性障害は自分の欲求に衝動的ですぐに行動する傾向があります。

 

不注意

自閉症スペクトラム障害(ASD) の患者は、自分で決めたことを最優先するので、柔軟性をもとめられても適応できません。そのため、周りとすれ違いが起こってしまい、ミスを引き起こします。一方、注意欠陥・多動性障害は見落としや詰めの甘さなどからミスを起こします。

 

総じて、 自閉症スペクトラム障害(ASD) の患者のほうが表情に変化が少なく、何を考えているのかわからないことが多いようです。

自閉症スペクトラム障害(ASD) は、協調性や対人スキル、柔軟な対応など複数のスキルをもとめられる職種には向いていません。一方で、特定の分野に対して強いこだわりを持つ 自閉症スペクトラム障害(ASD) を持つため、研究者や学者、芸術方面の職種が向いているようです。加害者の少女が、この特性をポジティブな方向で活かせなかったのは、とても残念です。

 
  

<参考資料>
*1)姜 昌勲『大人の発達障害 診断マニュアル』中外医学社
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52069875.html

 

監修:山本恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長

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2015/07/14 13:06掲載