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タックス・ヘイブンに対する規制はある?
タックス・ヘイブンの利用は、通常は税法に抵触しない形で行われるため、行為の性質としては「節税」と位置づけられます。
ですので、タックス・ヘイブンを利用する行為自体が違法となるものではありません。
しかしながら、タックス・ヘイブンの利用は自国の税収の減少をもたらします。
各国では、タックス・ヘイブンを利用した租税回避行為に対する規制措置が講じれらています。日本でも、1978年度租税特別措置法の改正により、タックス・ヘイブン対策税制が講じられてるのです。
現在の日本のタックス・ヘイブン対策税制では、
1.法人所得税が存在しない国・地域
2.法人所得税率が20%以下の国・地域
これらを対象に、一定の要件の下で、当該国・地域に設立された子会社等の所得を当該子会社等の株式の直接・間接保有割合に応じて日本の株主の保有とみなして、日本の税法に基づいて課税する仕組みとなっています。
さらに近年は、OECD(経済協力開発機構)とG20加盟国が協力して、タックス・ヘイブンに対する国際的な対抗策への取り組みも進められています。
タックス・ヘイブン自体は違法ではないが…
タックス・ヘイブン対策税制に違反する場合は別ですが、これまで見てきたとおり、タックス・ヘイブンの利用自体は違法ではありません。
現に、日本の大企業でも、タックス・ヘイブンは広く利用されています。
しかしながら、源泉徴収制度によって所得を100%捕捉されている労働者の方々の立場から見れば、タックス・ヘイブンを利用して租税を回避する行為は、例えそれが適法であるとしても、納得し難いものではないでしょうか。
例えば2012年には、大手コーヒー店チェーンの『スターバックス』が、税率の低い国にあるグループ企業を利用し、700以上もの店舗を展開していたイギリスにほとんど法人税を納めていなかったことが発覚。
この時は、消費者による不買運動にまで発展する騒動となりました。
ただし、タックス・ヘイブンの利用によりグローバルビジネスが活発・促進されるという側面があることも事実。
タックス・ヘイブンの利用自体を断罪するのは適切ではないでしょう。
とはいえ、脱税の手段として用いられるケースも数多く見受けられるため、先に述べたとおり、国際レベルでの適切な取り組みが望まれます。
<取材協力・監修者のプロフィール>
石井林太郎(いしい・りんたろう)
弁護士/スプリング法律事務所
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