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認知症の症状としての「もの忘れ」
これに対して、病的な認知症のもの忘れは、「新しいことを覚えられない」ことから始まるといわれます。
「記銘」機能が低下します。
さらに、「保持・蓄積」があいまいだったり、体験したこと全体を忘れてしまうのが典型的症状です。
その結果、「同じことを何回も聞く」「同じものを何回も買ってくる」「いつも同じ探し物をしている」「食事は済ませたのに『ご飯はまだか?』という」といったことがよく起こります。さらに、料理の手順や家電の操作の間違いなど、ものごとを進める手順を忘れることも多くなります。
これを「実行機能障害」と呼んでいます。判断や手順を忘れてしまうということです。
認知症の症状としてのもの忘れの特徴は、次のような点です。
・もの忘れを自覚できない
・体験したこと自体を忘れる
・日付や曜日、場所などがわからなくなる
・ヒントがあっても思い出せない
・日常生活に支障が出る
・判断力が著しく低下する
・つじつまを合わせるため、作り話をする
・探し物は誰かにとられたと思い込む
このように、物忘れがひどくなったり、判断・理解力が衰えたり、時間・場所がわからなくなったりといった症状が出てきたら、認知症を疑い、早期に対応することが必要となってきます。
神経内科、精神科、脳神経外科、総合診療科、もの忘れ外来といった診療科に受診するようにしましょう。
またその際、本人は自覚がないので、本人のことをよく知っている家族が同伴することが大切です。
海馬が障害される?認知症の「物忘れ」
記憶の種類には、保持が30秒くらいで、覚えてもすぐに忘れてしまう「短期記憶」と、それ以上の長さが保てる「長期記憶」とがあります。
短期記憶が長期記憶に変換されるには、脳の「海馬」が重要な役割を果たしています。ですから、認知症のもの忘れと海馬の障害との関連が研究されています。
ところで、長期記憶には次の4つが分類されています。
1.手続き記憶
運転や箸の使い方といった、身体で覚えている記憶
2.プライミング記憶
「き×く」と書くと、×を「お」と思う、「これはこうにちがいない」と判断する根拠となる記憶
3.意味記憶
一般的知識
4.エピソード記憶
思い出に相当する記憶
もの忘れがひどくなっていくと、エピソード記憶や意味記憶が想起できなくなったり、長期記憶全体が記銘できなくなるとされています。
反対に、かつて覚えた技能など身体で覚えている手続き記憶については、物忘れがひどくなったり認知症になったりしても、最も侵されにくい記憶とされています。
【参考】
株式会社エス・エム・エス 認知症ねっと『加齢による物忘れと認知症の違いは?』(https://info.ninchisho.net/mci/k20)
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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