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人間は脳の10%しか使っていないというのはホント?
「脳は10%しか使われていない」という話がありますが、そもそもこれはどこからきた話なのでしょうか?
「脳の使用率が10%」という話には、次の3つの説が存在します。
(1)アインシュタインによる説
アインシュタインが「人間は潜在能力の10%しか引き出せていない」という言葉を発した、とする話があります。
これは、ウィリアム・ヘルマンスの著書『アインシュタイン、神を語る』の記載に由来するもので、この著書がもとになって、「脳は10%しか使われていない」という神話が生まれたとされています。
しかし、あくまでも著書に記載があるだけであって、実際にアインシュタイン本人が言葉にしたという根拠はないといわれています。
(2)「グリア細胞」説
グリア細胞は脳のおよそ90%を占めています。
先に述べたように、グリア細胞は神経細胞をサポートする働きがありますが、情報伝達する際の電気信号には必要がないと考えられていました。
このことから、「人間の脳は10%しか使われていない」という話が出てきたといわれています。
(3)「サイレントエリア」説
19世紀には、動物の脳を使ってさまざまな研究が行われていました。
研究の結果、脳を刺激しても変化が起こらない部分や、役割が判明しない部分があることがわかりました。
この部分は「サイレントエリア」と呼ばれ、このことから脳は10%しか使われていないと認識されるようになったといわれています。
それでは、実際に脳はどのくらい使われているのでしょうか?
脳はどのくらい使われているの?
これまで、ヒトの脳はそれぞれの機能を司る領域に分けられていて、ひとつの情報を処理する際にはその機能を司る領域のみが使われていると考えられてきました。
しかし、アメリカのマサチューセッツ工科大学のピカワー学習・記憶研究所は、科学雑誌『サイエンス』の中で「脳の各領域は共同して情報交換を行いながら処理をしている」ことを発表しました。
つまり、それまで一般的に言われていた「脳はそれぞれの機能を司る領域に分けられていて、ひとつの情報を処理する際にはその機能を司る領域のみが使われている」という説は間違っていることが証明されたのです。
ピカワー学習・記憶研究所が行った研究では、“点の色や動きを認識する”という作業を行う中で、脳の6つの領域の神経がどのように活動するかを調べました。
その結果、ある特定の機能を司っている領域のみではなく、すべての領域において同時に神経活動が行われていることがわかりました。
もちろんその中には、色よりも動きを多く処理する領域もあれば、動きよりも色を多く処理する領域があることも明らかにされました。
このことから、脳はある特定の領域のみがフルに活動しているのではなく、機能ごとでメインとなる領域を変えながら、全体的に使っているということが判明し、「脳は10%しか使われていない」という説は覆されたのです。
しかし、実際に脳のどのくらいの割合が使われているのか、あるいは、脳は100%を使われているのか、ということは明らかになっていないのが現状です。
今後の脳科学の研究に期待したいところですね。
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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