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執筆:青井 梨花(助産師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
多くの方は「母乳とは赤ちゃんを育てるためにお母さんが生産するもの」と思うでしょう。
ところが、妊娠もしていないし、出産後でもないのに、母乳が出ることがあるのです。
なぜこのようなことが起こるのでしょう?
この症状は、病気のサインかもしれませんから見過ごせません。
今回はこの「妊娠・出産をしていないのに母乳が出る」という症状についてご説明いたしましょう。
授乳期間以外に母乳が分泌されるケース
妊娠から出産後の授乳期間には、生理的な変化として乳汁分泌がみられますが、その期間以外に、左右両方の乳頭から、母乳のような乳汁分泌がみられるものを、乳汁漏出症(にゅうじゅうろうしゅつしょう)と呼びます。
原因は、脳の下垂体前葉(かすいたいぜんよう)という器官から分泌される、「プロラクチン」というホルモンの過剰分泌、と考えられています。
妊娠すると血中濃度が徐々に上がり、プロラクチンは乳腺の発達を促し、出産後は乳汁を分泌するという働きをしますが、妊娠中でも授乳期間中でもないのに、プロラクチンの血中濃度が高い場合は「高プロラクチン血症」といいます。
ただし、プロラクチンの分泌が亢進しているから必ず乳汁分泌があるわけではなく、また、乳汁分泌があればプロラクチンが高値とも限りません。
しかしながら、妊娠・出産していないのにプロラクチンが過剰に分泌されていると、原因によっては治療が必要です。
プロラクチンには、排卵に必要なホルモンの作用を妨げる働きもあるため、高プロラクチン血症だと、排卵障害や無月経などの月経異常を伴う可能性も出てきます。
乳汁分泌があり、なおかつ無月経の人の3分の2は、高プロラクチン血症ともいわれます(※)。
放置すると不妊の原因にもなります。
なお、プロラクチンというホルモンは、男性も精嚢線や前立腺の発育を促すホルモンとして分泌されています。
ですから、まれですが男性でも乳汁の分泌があり、検査すると高プロラクチン血症が見つかった、というケースも見受けられます。
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