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妊娠・出産していないのに母乳が出る原因
乳汁漏出症は、以下のような原因が考えられます。
下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)
脳の下垂体にプロラクチンを産生する腫瘍(多くは良性)ができて、そこからプロラクチンが大量に分泌されるために起こります。
高プロラクチン血症の3分の1にみられるともいわれます(※)。
腫瘍はMRI(核磁気共鳴画像法)などでも判別が難しい小さいものから、下垂体の下の脳神経を圧迫して、頭痛や視野が欠けるなどの症状を起こす大きなものまであります。
視床下部障害
プロラクチンの分泌は、通常、脳の視床下部から分泌されるドーパミンという物質によってコントロールされています。
ですから、視床下部に腫瘍ができたり、ストレスなどが原因でホルモンの分泌がうまくコントロールできなくなったりすると、プロラクチンの分泌が高くなることがあります。
薬剤によるもの
抗うつ薬やいわゆる精神安定剤、胃潰瘍の治療薬、降圧剤、ピルといった薬剤の一部を、長期間服用することで、プロラクチンの分泌をコントロールするドーパミンの分泌が抑制され、高プロラクチン血症を起こすことがあります。
このほか、甲状腺機能低下症や慢性腎不全などの病気、また、過度のストレスによる自律神経の乱れから、ホルモンバランスが崩れて高プロラクチン血症につながることもあります。
なかには、とくに出産を経験している方で、なんらかの刺激が乳頭に加わり、一時的に乳汁分泌がみられるケースもあります。
乳汁分泌の裏に潜む病気の可能性
乳汁分泌の治療は、原因や他の症状の程度により決まります。
基本的には、プロラクチンの分泌をコントロールするドーパミンを補充するため、ドーパミン製剤の内服をします。
腫瘍がある場合は、手術が選択されるケースもあります。
特定の薬剤が原因であるときは、薬を処方した主治医と相談し、治療の優先度を考慮した上で、薬剤の中止や減量、変更などの処置をします。
また、原因が特定できないこともありますが、症状として乳汁分泌以外に異常がない場合、症状の程度や年齢なども考慮して、治療せず経過観察をすることもあります。
このように、妊娠・出産の時期ではないのに乳汁分泌の症状が出ているのは、病気のサインかもしれません。
くれぐれも、自己判断をするのではなく、婦人科か内分泌専門の内科に相談しましょう。
【参考】
(※)『日本産婦人科学会:産婦人科診療ガイドラインー婦人科外来編』2014(http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2014.pdf)
<執筆者プロフィール>
青井 梨花(あおい・りか)
助産師・看護師・タッチケアトレーナー
株式会社 とらうべ 社員。病院や地域の保健センターなど、さまざまな機関での勤務経験があるベテラン助産師。
現在は、育児やカラダの悩みを抱える女性たちの相談に応じている。プライベートでは一児の母。
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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