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大人の「百日ぜき」の症状と問題点
一方、大人が百日ぜきにかかると、痙咳(けいがい)期にみられるような発作性の咳はほとんどみられず、比較的長い期間咳が続くほかは軽症で回復することが多いといわれます。
症状が風邪に似ているせいで、「たかが咳」と軽んじて受診が遅れる、放置してしまう、また、診断がつきにくい…といった事情から、周囲に感染を拡大させる懸念があります。
感染が、予防接種を受けていない(=免疫がない)新生児や乳幼児に及ぶと、死にいたるほど重症化させてしまうリスクがあり、現在問題視されています。
日本では、百日ぜきの予防接種を、生後3か月から計4回推奨していますが、ワクチンの効果は少しずつ減り、免疫効果の持続は接種後10年程度といわれます。
このことも、大人の百日ぜき患者が増加している一因と考えられています。
ちなみに他国では、最も予防接種が多いところでは計6回、ほかにも、就学時から小学校低学年までの追加接種や妊婦にワクチン接種を奨励するなど、さまざまな対策がとられています。
百日ぜきから小さな命を守るために~早期診断・治療の推進~
このように、大人の百日ぜきというのは、自分自身は軽症であっても、ワクチン未接種の乳児が感染すると重症化させやすい、という危険を含んでいます。
よって、大人の罹患者の早期診断は、感染を拡大させないためのキーポイントになります。
従来の検査方法では、結果が出るまでに時間を要し、診断遅れの原因となっていました。
しかし、2016年から迅速な検査が可能になり、かつ、保険適応となる新検査が実用化されはじめています。
それにともない同年「小児呼吸器感染症ガイドライン」も改訂され、成人では「2週間以上続く咳」を「1週間以上」に変更するなど、早期診断を実現すべく診断基準も見直されています。
また、今までは小児科のうち限られた医療機関にしか患者報告の届出義務がなく、全体像はつかみきれていませんでした。
こちらについても2018年に届出基準が改正され、対象を全国の医療機関とし、成人罹患者を含め全患者を届け出るよう変更されました。
こうした新検査法による診断精度の向上や、国内全体の百日ぜき発生動向の正確な把握により、早めの対策を講じることで小さな命を守れるのではないかと期待されています。
なお、現在百日ぜきの定期接種は乳幼児期に限られており、それ以外は自費となっていますが、今後、国内の発生状況が明らかになると、この点も考慮され変更が加えられるかもしれません。
最後に、自分で予防的にできる対策として、咳が出たらマスクを着用することや、手洗い、うがいを心がけることが挙げられます。
そして、1週間以上咳が長引くときは、百日ぜきを含む他の呼吸器疾患の可能性があること、自身が感染源になるかもしれないことを踏まえ、風邪と決めつけないで早めに受診するようにしましょう。
<執筆者プロフィール>
青井 梨花(あおい・りか)
助産師・看護師・タッチケアトレーナー
株式会社 とらうべ 社員。病院や地域の保健センターなど、さまざまな機関での勤務経験があるベテラン助産師。
現在は、育児やカラダの悩みを抱える女性たちの相談に応じている。プライベートでは一児の母。
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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