(※記事中の語句のリンクは、その語句について詳しく解説したMocosuku姉妹サイトが開きます)
溜め込み症候群の特徴
精神医学の専門医によると、溜め込み症候群はかつて強迫性障害(※)の一病状と分類されていたといいます。
強迫性障害の20~40%の患者に、溜め込み障害がみられたという報告もあります。
しかし、強迫性障害は、本人が苦しくても否応なく強迫観念が迫ってきて強迫行為に駆り立てられる、という障害です。
たとえば、バイ菌がいっぱい手についていると確信していて、いつまでも手を洗い続ける、といった具合です。
すなわち、本人はそうせずにはいられないのであって、すき好んで行っているわけではありません。
これに対し溜め込み症候群は、本人(患者)はむしろ好ましい行為として溜め込みを行っている、と専門家は指摘しています。
そこで現在では、強迫性障害から独立した疾患だと認知されるようになりました。
※厚生労働省『知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス-強迫性障害-』 (http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_compel.html)
次のような症状が溜め込み障害の特徴です。
物を捨てることに強く抵抗する
捨てること自体に嫌悪感を抱いている
持ち物に感情的な思い入れが強い
住居はもので溢れ、台所なども使えない状態になっている
新聞や雑誌が山積みになっている
大切なものが見つからないことがしばしばある
生ごみなどもたまっていて、衛生的な問題も生じている
優柔不断で先延ばしにする心理的傾向がある
社会との接点は少ない
溜め込み症候群の治療
治療の際は、精神科や神経科、心療内科を受診することになります。
溜め込み傾向は、一般に20代ころ始まるのですが、受診は遅れがちであるといいます。
理由は、本人が好んでしている行為であり、病気という認識が希薄だからです。
また、治したいという意識がないため、溜め込みがかなりエスカレートした段階で、心配した周囲の人に説得されようやく自覚する、という事例も見受けられます。
このように、病気という認識と治そうという意欲が少ない分、不承不承病院に来て消極的に治療することも、治療の難しさを招いているようです。
薬物療法も効果が出づらいといいます。
なお、溜め込み症候群の症例は、周囲からはゴミと見える「モノ」とは限りません。
対象が小動物などの場合もあって、そうなると「ネコ屋敷」「犬屋敷」といった様相を呈してきます。
やはり、コレクターとは一線を画します。
メディアで頻繁に取り沙汰されるこの問題には、溜め込み症候群という病気が隠れている可能性があるということを、私たちも知っておく必要があるでしょう。
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
スポンサーリンク