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「話さない」のではなく「話せない」
このように、場面緘黙は「話さない」わけではなく「話せない」のです。
それを周囲が理解できていないという点が問題です。
治療に携わった専門医も「患児が自分からかかわりを求めることは少なく、身を固くしてじっとしていることが多い」と述懐しています。(※)
この記述からは場面緘黙の子どもが抱える、話せない場面が怖い・緊張する・過度に不安である、といった心もちが切々と伝わってきます。
誰しも多かれ少なかれ、人見知りする傾向は持っているでしょう。
しかし、自分の経験の範囲で場面緘黙を判断しようとすると、当人たちが感じているレベルの怖さ・緊張・不安を理解するのは難しいと思われます。
それでも、「社会化欲求型タイプ」のように、家庭外でも話せるようになりたい、と願っている人たちもいます。
このタイプは「治療がうまくいくと予後は良好」と専門家も見立てています。
日本では決して認知度が高くない「場面緘黙」。
ぜひこれを機に興味と関心を持っていただき、そうした子どもや大人に出会ったときに、共感的理解をもって接してもらえたら…と願うところです。
※樋口輝彦他/編集『今日の精神疾患治療指針』(医学書院 2013年 所収)
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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