(※記事中の語句のリンクは、その語句について詳しく解説したMocosuku姉妹サイトが開きます)
欲求という概念
「欲求」という用語は、「要求」「動機」「意欲」「欲望」あるいは「モティベーション」などの類義語として、人間(あるいは動物)を行動へといざなっていく機能だと心理学では定義されています。
食欲は「食べるという行為をおこなわせる何か」、性欲は「セックスへとかりたてる何か」という意味です。
最近では、この「何か」に相当する部分に「食欲中枢」「性ホルモン」「メラトニン」といった生理学的な物質やメカニズムが、説明概念として用いられることも珍しくありません。
実はかつては、欲求という用語は生物学の「本能」という用語で語られていました。
なぜ人は食べるのかという答えは「食本能があるからだ」、なぜセックスをするのかは「愛しているから」ではなく、「性本能に突き動かされているからだ」という答えが一般的でした。
読者の皆さんもご存知でしょうが、20世紀初頭に精神分析学を始めたS.フロイトは、人間の行動原理として「性的衝動」を挙げました。
セックスだけでなくさまざまな人間活動が、性本能(リピドー)の発露によって行われているといった汎性欲論を展開して、同時代の人たちに驚きと抵抗をもたれ、やがては受け入れられたという時代もありました。
生物学、心理学、生理学や脳科学と、時代につれて説明概念は変化していますが、結局のところ共通しているのは、人間が生きるのはどうして?どうやって?という問いへの回答としてこの問題が示されているということです。
欲求5段階説(自己実現論)
もう半世紀も前のことになりますが、当時、アメリカ人心理学者A.マズローが人間の欲求論として「欲求5段階説」を唱え、心理学分野を超えて経営学や看護学といった広い分野にわたって受け入れられました。
マズローによると、人間の欲求は5つの階層構造をなしています。
一番下から順に「生理的欲求」「安全欲求」「所属欲求」「承認欲求」そして、最高位にあるのが「自己実現欲求」と呼ばれました。
そして、マズローの理論ではより下位のカテゴリーの欲求が満たされることで、より高次の欲求を追い求めるようになり、人間として最高の価値は最上位の「自己実現欲求」を追い求めることだという結論に至りました。
当のマズロー自身はこの学説に満足していませんでした。
けれどもあまりにも有名になった「欲求論」は一人歩きを始めてしまいました…。
スポンサーリンク