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執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
「見ない方がいい」「見てはいけない」と思えば思うほど見たくなる、ダメと言われるとかえってやりたくなる…そんな“あまのじゃく”な気持ちを経験したことは誰しもあるでしょう。
これはどのような人間心理から起こるのでしょうか?
ホラー映画やお化け屋敷などは最たるシチュエーションですが、他にも日常のさまざまなシーンに「怖いもの見たさ」はあふれています。
心理的抵抗としてのカリギュラ効果
人は生まれながらにして「自分の行動や選択は自分で決めたい」という欲求を持っています。
この欲求が侵されたとき無意識に抵抗を示すという、一種の反発作用のことを「心理的リアクタンス」と言います。「心理的反発」とも呼ばれます。
リアクタンス(Reactance)という用語は、もともと電気回路で電流の流れにくさを表す量のことを指していて、「疑似的な抵抗」と言うこともあります。
「心理的リアクタンス」はここから転じた用語で、1966年に心理学者のブレームが名づけました。
何かを行っていく動機づけ(モティベーション)のプロセスで、自分に自由があると信じているとき、その自由が失われそうになると起こってくる心理的反発を表しています。
失われた自由を回復しようと作用する心理、とも言えるでしょう。
この「心理的リアクタンス」によって起こる効果として、よく引き合いに出されるのが「カリギュラ効果」です。
1980年に封切された映画『カリギュラ』は、当時、表向きローマ皇帝カリギュラを描いた歴史大作とPRされましたが、実態はポルノまがいの過激な映画だったため一部地域で上映禁止が相次ぎました。
そうすると、見たくなる人が続出して、まだ上映されている映画館に人が殺到したといいます。
そこから、禁止されるほどやってみたくなる心理状態を「カリギュラ効果」と呼ぶようになりました。
日本でも古くからある民話「鶴の恩返し」は、カリギュラ効果がテーマの代表格でしょう。
主人公が罠にかかった鶴を助けると、鶴は人間の女性に姿を変えて現れ恩を返すというお話。
女性は主人公に「部屋にこもって布を織っているときは決して見ないでください」とお願いするのですが、ご存じのとおり見てしまって鶴は去ってゆくのですね。
カリギュラ効果や心理的リアクタンスは、誰しも思い至る心理ではないでしょうか。
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