(※記事中の語句のリンクは、その語句について詳しく解説したMocosuku姉妹サイトが開きます)
パニック障害は増えているの?
冒頭で述べたように、パニック障害は近年増加傾向といわれています。
その実態を見てみましょう。
パニック障害は専門的には「不安障害」というカテゴリーに分類されます。
過去にアメリカで行われたいくつかの調査結果によると、不安障害の有病率は1980年代に14.6%だったのに対し、1990年代(その後2001-2002年に再調査が行われている)には31.2%であることが明らかになっています(厚生労働省サイト)。
同様にパニック障害も、80年代と90年代の調査を比較すると、1.6%から4.7%に増加しています。
この2つの調査は手法や対象者が違うため厳密な比較とはいえませんが、パニック障害をはじめとする不安障害が増加傾向であることは推測できます。
また、近年日本で行われた調査でも同様の傾向を示すデータがあります。
大阪産業保健総合支援センターが大阪府にある1276事業所を対象に行った調査では、不安障害の診断で休職した人の数が、平成12年から平成26年までで5.5倍に増えていることが明らかになりました(大阪産業保健総合支援センター資料)。
本調査ではパニック障害の人数は示されていませんが、パニック障害の人数が増えている可能性は高いと考えられます。
パニック障害が増えている理由は?
パニック障害の原因は、まだはっきりと解明されていません。
しかしながら、何らかの刺激によって起こる脳の機能異常や、心理的なストレス、遺伝的要因などの関与が指摘されています。
また、これまでの研究で、台湾や韓国ではパニック障害の患者数が都市部で多いことがわかっていますし、精神科医の貝谷久宜医師は、地球温暖化や運動不足、昼夜逆転の生活も発症に関係しているという見解を示しています(パニック障害入門)。
さまざまな研究や調査結果からは、心身ともにストレスが多い現代の生活そのものが、パニック障害の増加に関係しているのではないかと推測できます。
それを踏まえると、パニック障害発症のリスクを少しでも減らすために、生活習慣を見直してふだんから自分の心身をケアすることが重要と言えるでしょう。
さらに、パニック障害は、うつ病やパニック障害以外の不安障害(強迫性障害やPTSDなど)やアルコール依存症などと併存しやすい病気であるとも言われています。
ほかの精神疾患を合併したケースでは、治療に長期間を要するそうですので、パニック障害が疑われる症状がある場合は、まずは心療内科や精神科を受診しましょう。
早めの受診と適切な対処によって、その後の生活への影響を最小限に抑えることができます。
<執筆者プロフィール>
伊坂 八重(いさか・やえ)
メンタルヘルスライター。
株式会社 とらうべ 社員。精神障害者の相談援助を行うための国家資格・精神保健福祉士取得。社会調査士の資格も保有しており、統計調査に関する記事も執筆
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
スポンサーリンク