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ここでは 乳がんの治療法 についてご紹介します。
元女子プロレスラーでタレントの北斗晶さん(48)が、「乳がん」を患っていることを発表しました。前編に続いて、乳房全摘出を含む乳がんの治療法について解説します。
乳がんの治療法 …局所療法と全身療法
乳腺組織には母乳の通り道である乳管が存在します。乳がんは、乳管の膜を破ってしまうと、リンパ管や血管に入ってリンパや血液に乗って全身に流れ、比較的早くから遠隔転移を起こしやすいと言われています。
このため、乳がんでは乳房のがん細胞に対する「局所療法」と、乳房以外に存在するかもしれないがん細胞に対する「全身療法」が用いられます。局所療法では手術や放射線治療が、全身療法では化学療法(抗がん剤)やホルモン療法がとられます。
<局所療法>
●手術
外科手術で乳房内のがんを取り除く方法です。できるだけ小さく切除して乳房を残す温存療法と、大胸筋から大きく切除する全摘出があります。現在は温存療法が半数以上を占めるようになっています。
【乳房温存療法】
乳房温存手術は、しこりを含む乳腺の一部を切除して、基本的には乳頭・乳輪を残す手術です。ガイドラインでは温存療法が適用される条件が次のように決められています。
1)腫瘤(しこり)の大きさが3.0cm以下
2)各種の画像診断で広範な乳管内進展を示す所見のないもの
3)多発病巣のないもの
4)放射線照射が可能なもの
5)患者が乳房温存療法を希望すること
しこりを切除した後、残した乳房には放射線をかけます。残した乳房内の目に見えない微小がんを破壊するためです。乳房温存手術と放射線治療を合わせて行う方法を「乳房温存療法」と言います。
【乳房全摘出術】
腫瘍が大きい、乳房内に広範囲に広がっている、乳房内の多発、温存手術が受けられる対象でも放射線治療が受けられない、本人が全摘出術を望んでいる、同時再建を受けることを望んでいる、などの場合に行います。
1)胸筋温存乳房切除術
腫瘍を含んだ乳腺全部、乳頭、皮膚、脇の下のリンパ節を切除します。胸筋は残します。大胸筋と小胸筋を残す場合と、小胸筋だけを切除する手術方法があります。大胸筋を温存するメリットは、術後の腋の下の凹みなどが少なく、皮下に肋骨が浮かび上がらないなど、胸の変形を抑えられることです。デメリットは、併せてリンパ節を切除した場合に水分の通り道がなくなり、上腕のむくみが起きやすいことです。
2)皮下全乳房切除術
腫瘍を含んだ乳腺全部を取り除きます。乳房の外縁から下縁に沿って、皮膚を切開して乳腺だけを取り除く方法です。胸の膨らみはなくなりますが、乳頭、乳輪は残ります。腫瘍が大きい、乳房内にがん細胞が広がっている、乳房内にいくつもの腫瘍がある、などの場合に行われます。胸筋は残すので、術後、腋の下が凹んだり、肋骨が浮き出たりしないのがメリットです。乳房内再発の可能性が低く、ほとんどの場合、放射線治療の必要がないと言われています。
【同時再建術】
乳房切除と同時に、自分の体の組織、または人工物を用いて乳房を作る手術です。皮下全乳房切除術では、乳頭、乳輪は残っているので、胸の膨らみだけを作ることになります。一方、胸筋温存乳房切除術では乳頭・乳輪も切除しているので、胸の膨らみを先に作ってから、そのあとに乳頭、乳輪を形成します。
●放射線療法
放射線治療は、乳房温存術後、乳房切除後、再発部位への治療に分類されます。乳房温存手術の場合、部分切除の手術だけでは再発が20〜30%程度生じると言われており、放射線治療を行うことにより再発を2〜3%程度に抑えられます。これは乳房をすべて切除した場合とほぼ同じ効果です。ただし、放射線で転移を抑制することはできません。
<全身療法>
●化学療法
抗がん剤でがん細胞を攻撃し、死滅させる治療法です。手術をする前に化学療法を行って、あらかじめ腫瘍を小さくしてから、乳房温存手術を行うこともあります。
●ホルモン療法
乳がん細胞の発生、増殖に関わる女性ホルモンを作る働きを抑えたり、ホルモンの受容体の働きを抑えたりして、がん細胞の増殖を阻みます。飲み薬や注射があり、長い期間にわたって治療が行われます。
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