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治療が難しいのは大腿骨頸部骨折
ともに脚の付け根の骨折で、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療を併用する点は共通していますが、大腿骨頸部骨折(内側骨折ともいいます)と大腿骨転子部骨折(外側型ともいいます)とでは治療の困難さが異なります。
関節は関節包という袋に覆われており、前者はこの関節包の中にあり、後者は関節包の外側にあります。関節包の外側にある転子部には骨の癒合を助ける外骨膜がありますが、内側の大腿骨頸部にはそれがありません。そのため大腿骨頸部は折れた骨が非常に癒合しにくい部位となっています。
加えて、大腿骨頸部に栄養を送る血管は細く、骨折時の損傷で血流が途絶え、骨頭部分が壊死してしまうことがあります。対する転子部は、周りを筋肉組織に囲まれ、血流も良好です。折れた骨が癒合しやすく、壊死も起きにくいのです。
大腿骨頸部骨折による寝たきり :手術方法の違い
骨が癒合しやすい大腿骨転子部骨折では、骨折部を元の形状に近づけてから医療用のネジやプレート(板)、ネイル(釘)を用いて固定する手術を行います。
一方、大腿骨頸部骨折で固定による手術を行った場合、骨が十分に癒合しなかったり、壊死が起きるなどのリスクをともないます。そのため、骨折した頸部から骨頭までを切除して人工物に置き換える「人工骨頭置換術」が広く行われています。一般的に骨折部のずれが小さいときは固定による手術、ずれが大きいときは人工骨頭置換術が選択されます。
手術後は整形外科医、理学療法士、看護師が連携してリハビリを支援します。手術翌日からベッド上での坐位訓練を開始し、車いす、立位保持、平行棒内での歩行訓練、歩行器を用いた歩行訓練、松葉杖による歩行訓練、T字型の杖を用いた歩行訓練というように、段階を追って進めていきます。リハビリにおいては「してもらう」意識ではなく、「自ら行う」意識が回復スピードを左右するといわれています。大腿部骨折を克服し、機能回復を果たすにはリハビリに対する本人の努力と家族の励ましが大きな力になります。
執筆:斉藤雅幸(Mocosuku編集部)
監修:樋口二三男(医学博士、整形外科医、とらうべ顧問産業医)
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