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突然死の原因になる心疾患 :無症候性心筋虚血に注意
虚血性心疾患の内、症状を伴わないものを無症候性心筋虚血といいます。高齢であったり、糖尿病にともなう神経障害があったり、過去の心筋梗塞で抹消神経の一部が壊死していたりすると、痛みを感じる感覚が鈍くなり、症状が出ないことがあります。病気が見過ごされやすく、必要な投薬などを受けていないケースが多くなります。症状のない心筋梗塞は、症状のある心筋梗塞に比べて死亡率に差はないので注意が必要です。心臓ドックなどで冠動脈の検査をしておくことで、リスクの大きさを前もって判断することができます。
精度の高い検査の代表は手足の動脈からカテーテル(医療用の柔らかい管)を入れる心臓カテーテル検査です。ただし、カテーテルという異物を体の中に入れるので、一定のリスクをともないます。カテーテルを心臓まで送り込む際に血管を傷つけたり、出血や大きな血腫(血の塊)が生じたりする可能性があります。
症状がなく、心臓に問題があるかどうか分からない人の検査として期待されているのが、CTやMRIを用いた画像診断法です。中でも、MRIを用いた心臓MRIは、CTのような被ばくや造影剤による体への負担なしで検査が可能です。MRIは造影剤なしでも撮影できますが、必要に応じて造影剤を用いることで、血流の状態や心筋のダメージなどをより詳しく調べることもできます。
検査によって冠動脈が狭くなっているなどの問題が見つかった場合は、症状の重さに応じて経過観察や内科治療、また必要に応じて、予防的な心臓カテーテル治療を選択することもできます。65歳以上の疾患別の死亡率(高齢者人口10万人当たりの死亡数)を見ると、心疾患は癌に次いで2番目となっています(内閣府「平成26年版高齢社会白書」)。心疾患は誰がかかってもおかしくない身近な疾患です。渡さんは体の異変に気づき、すぐに病院に行ったことが功を奏しました。突然死を防ぐには、症状がある場合に病院に直行するのはもちろんのこと、症状がない場合でも心臓ドックや検診を選択肢に入れておきましょう。一般に、50歳を過ぎた人に対して心臓の検査が勧められています。
執筆:斉藤雅幸(Mocosuku編集部)
監修:岡本良平医師(東京医科歯科大学名誉教授)
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