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「 人食いバクテリア 」とも呼ばれ、急激に手足が壊死して死に至ることがある「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の今年の患者数が279人となり、過去最多となったことがわかりました。
人食いバクテリア の怖さ
まず劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、レンサ球菌による感染症です。菌自体はありふれているもので、通常は、レンサ球菌に感染しても無症状のことが多く、ほとんどは咽頭炎や皮膚の感染症にとどまります。しかし、まれに通常は細菌が存在しない組織にレンサ球菌が侵入し、急激に症状が進行して重症化することがあり、38度以上の発熱や傷口の痛みが起きて、さらにショック症状や肝不全、腎不全を発症することがあります。筋膜や脂肪の組織が壊死して、手や足の切断が必要になることもあり、「 人食いバクテリア 」とも呼ばれています。およそ3~4割が死亡します。
症状
初期の症状は手足の強い痛み、続いて、発熱、悪寒、筋肉痛など、インフルエンザに似た症状が出ます。また、めまいや錯乱状態を伴うこともあります。症状が進行すると、筋肉や脂肪の炎症、呼吸障害、意識障害などが起こります。
症状の進行は早く、日常生活を普通に営んでいる状態から24時間以内に、多臓器不全で死に至るくらいのスピードがあります。
診断
血圧低下、皮膚の蒼白や冷や汗、意識障害などのショック症状や多臓器不全、それに加えて、通常では菌の検出されない血液や脳髄液、胸水、腹水などから溶血レンサ球菌を検出することで診断されます。
ちなみに「多臓器不全」とは、腎臓、呼吸器、肝臓、血液系、心血管系、消化器、神経臓器のうち、2つ以上の機能が悪くなった場合をいいます。
感染経路
「 人食いバクテリア 」の感染経路は不明な場合が多く、感染から発症までの潜伏期間も明確ではありません。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、子どもから大人まで広範囲の年齢層がかかります。感染した人のほとんどは、咽頭感染、皮膚感染だけで、まったく症状の出ない人もいます。
健康な人でも劇症を発症することがありますが、がん、糖尿病、慢性心疾患、慢性呼吸器疾患のような基礎疾患を持つ人やステロイドを服用している人などは、高い発症リスクがあります。
予防について
原因となる細菌は、咳などから移る飛沫感染をする、どこにでもいるものなので、風邪などの飛沫感染に対する一般的な対策と同じように、うがい・手洗いやマスクの着用が有効です。
咽頭痛がある場合は早めに医療機関などで受診し、溶血性レンサ球菌の感染を確認する検査を受けましょう。もし感染が確認された場合は、抗菌薬投与後24時間は、なるべく自宅で療養しましょう。
免疫力をアップさせることも有効な予防法です。免疫力アップには、栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレスをためない、適度な運動など、健康的な毎日を送ることが一番の予防ということになります。
最近、腸内環境が免疫力に影響すると言われるようになりました。下痢や便秘などを解消し、腸内環境をよくすることも心がけましょう。
<執筆>
南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師 株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー)
<監修医>
・岡本良平(医学博士 東京医科歯科大学名誉教授)
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