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シングルファザーとの結婚 :前妻との関係は「切れていない」
シングルファザーの健気さや愛情に共感する声がある一方で、女性にとっては、いざ結婚相手とみたときにいろいろと難しい面があるのも事実です。
特にやはり、自分とは血の繋がらない子供との関係がうまくいくのか、自分の子供が生まれたとき、愛情の注ぎ方の違いや兄弟間の不仲は起きないか、また夫と前妻との関係はどうなるのか、といった家庭の将来への不安が少なくないようです。
さらに法的な面でも、さまざまな気をつけるべきポイントがあります。
まず、相手の男性との婚姻届を出すだけでは、新しい妻と連れ子は法的には何の関係も発生しません。法的に親子となるためには「養子縁組」をする必要があり、養子縁組には特別養子縁組と普通養子縁組のふたつがあります。
このふたつの違いの特徴的な点は、前妻と連れ子との法的な関係は切れないのが普通養子縁組で、切れるのが特別養子縁組。ただ、特別養子縁組は、家庭裁判所の関与もあり、手続きにかなりの手間や時間がかかるため、新たな結婚相手の連れ子と親子関係を結ぶという目的であれば普通養子縁組を選択するケースが大半です。
男性の連れ子と普通養子縁組を行おうとしても、その子供が15歳未満であるときは、親権者と監護権者の承諾が必要な点は注意が必要です。実際上男性が子供の面倒を見ている場合、前妻との離婚の結果、法的に親権者も監護権者も男性とされている場合が多いとは思いますが、もしたとえば前妻が親権者とされている場合、15歳未満の連れ子と養子縁組をする場合には前妻の承諾を得なければならないというハードルがあります。
普通養子縁組をすれば、養子縁組のときから子供と結婚相手となる女性との間で親族関係(法定血族関係)が発生し、扶養の義務や相続権も発生します。半面、前妻との法的関係も切れていないため、前妻が亡くなった場合、子供に相続権が発生します。もし前妻が借金を残していた場合、それを子供が引き継ぐことになる可能性もありますし、逆に子供に有利な相続が生じることもありえます。
もし前妻からの借金の相続を避けたいような場合は、家庭裁判所で「相続放棄」の手続きをしなければなりませんが、相続放棄ができる期間は、相続があったことを知った日から3ヵ月以内なので注意が必要です。
シングルファザーとの結婚 :前妻と同じ戸籍に
さらに戸籍にもチェックポイントがあります。
離婚歴のある男性の場合、戸籍に前妻の名前が「除籍」という形で記載が残っていることがあり、仮に新しい妻となる女性が婚姻後男性の氏を名乗ることとした場合は、その戸籍に追記する形になります。前妻と「同じ戸籍に入る」ことになるため、心理的に抵抗を感じる女性も多いでしょう。
前妻の名前を戸籍から消したい場合は、違う市区町村に本籍を移す「転籍届」を出す必要があります。転籍届を違う市区町村に出せば前妻の名前は新しい戸籍に移記されませんが、同じ市区町村内にしてしまうと、前妻の名前は消えません。もっとも、転籍により前妻の名前が消えたとしても、これは単に本籍の変更により除籍者が移記されなかった結果、男性の最新の戸籍の記載に前妻が載らなかっただけですので、男性のすべての戸籍から前妻の記載を抹消したわけではありません。
いずれにしても、養子縁組や戸籍の変更は子供の立場や心理、そして将来にも影響を与えかねないため、慎重な判断が求められます。
愛した男性に子供がいた場合、悩ましいことも少なくありませんが、こうした知識を得たうえで、家族と自身の将来を冷静かつ現実的に考えることが大切といえそうです。
<参考>
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/rikon10/01.html
http://www.stat.go.jp/training/2kenkyu/pdf/zuhyou/singlef2.pdf
http://www.gyousyo3.sakura.ne.jp/saikonn-3-002.htm
http://president.jp/articles/-/5679
http://profile.ne.jp/ask/q-131300/
<監修>
伊藤 誠吾(弁護士)
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