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障害厚生年金と障害基礎年金 :初診時に厚生年金に加入していなかったSさんの場合
ところが、Nさんと同じ職場でやはり「うつ」を発症したSさん(仮名・31歳男性)の場合は少し事情が異なりました。中途採用で、3か月間の研修期間中に「うつ」を発症したSさんは、最初に精神科を受診したときには、まだ厚生年金に加入していなかったのです。そのため、Sさんは「厚生年金に加入している間に初診日があること」という障害厚生年金の支給要件を満たしておらず、申請を断念せざるを得ませんでした。
支給要件が違う 障害厚生年金と障害基礎年金
Sさんが申請できる可能性のある障害年金としては、もうひとつ「障害基礎年金」があります。障害基礎年金の場合は「初診日に国民年金に加入していること」が支給要件なのです。
しかしここで、もうひとつの年金の支給要件である「障害等級」の問題が出てきました。障害年金を申請するには、国民年金・厚生年金保険の基準に沿って、「障害の認定」を受けなければなりません。認定される障害は、重いものから順に1級~3級の等級に分けられています。「障害厚生年金」の場合は、支給要件が障害等級1級~3級までとなっているため、Nさんは問題なく障害年金を受給することができたのです。
ところが、「障害基礎年金」の場合は、支給要件が障害等級1級・2級のみとなっているため、障害年金を受給できる人の範囲がかなり狭くなっており、精神の障害では「日常生活に著しい制限を受ける」ようなレベルでない限り、なかなか受給が認められません。
Sさんは「うつ」によって勤務をつづけることは困難になっていたのですが、食事や買い物、入浴といった日常生活は問題なくできていました。そのため、社労士や精神科の医師から「この症状では障害基礎年金の申請は無理」と、Sさんは障害年金の受給をあきらめるようにいわれてしまったのでした。
このように、障害年金の申請においては、「(その病気や怪我で)最初に医療機関を受診した日はいつか?」ということと、そのときの「年金への加入状況」、そして「障害の等級」が非常に重要であり、これらの条件によって申請できる年金の種類や受給の可否も大きく違ってくるのです。
(【障害年金:その2】につづく)
※文中のエピソードは実話をもとに構成していますが、個人情報の観点から実在の人物・団体の明記を避けています。
<監修者プロフィール>
石村衛(いしむら・まもる)
FP事務所:ライフパートナーオフィス代表ファイナンシャルプランニング1級技能士(CFP) 東洋大学卒業 メーカー勤務の後、FP事務所:ライフパートナーオフィスを横浜市戸塚区に開設。地域に根ざしたFP活動を志向し、住宅ローン、不動産・証券投資、保険、貯蓄・など一般家庭のお金にまつわる様々なアドバイスを行っている。 お金に係わる出前授業を小・中・高校で実施。また、高等学校の保護者会などで進学費用や奨学金・教育ローンの講演多数。東京都金融広報委員会 金融広報アドバイザーとして活動中。
<執筆者プロフィール>
井澤佑治(いざわ・ゆうじ) 舞踏家/ダンサー。通販メーカーのコピーライターとして、健康食品などの広告を数多く手がけたのちに、ダンサーとして独立。国内外で公演やワークショップ活動を展開しつつ、身体操作や食事療法などさまざまな心身の健康法を探究する。現在はダンスを切り口に、高齢者への体操指導、障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などにも携わっている。 <参考資料> 障害年金について 日本年金機構 http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=3225
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