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子どもの生活技術 (3)
子どもの「生きる能力」を育むには
上記の肥後守は、1960年ごろに起こった「刃物をもたない運動」をきっかけに、学校から徐々に姿を消すことになってしまいますが、こうした道具を「危ない」からといってすべて子どもから遠ざけてしまうことは、子どもの「生きる能力」を削いでしまうことにもなりかねません。ナイフはもちろん、マッチや缶切りは大人でも一歩間違えればケガやヤケドをする可能性のある道具です。しかしこうしたものの使い方や危険性について、大人のしっかりとした管理のもとで子どもに教えておくことも、子どもの「生きる力」を育む上で必要なことといえるのではないでしょうか。
ちなみに、冒頭に述べた象印の調査によると、「タオルをしぼる」という単純な手作業についても、20年前と比べると「できる」という子どもが減少している状況です(20年前97.3%、現在80.4%)。こうした背景には、家庭や学校で子どもが雑巾で掃除をする機会が減っていることの表れでしょう。また、文部科学省の資料を見ると、体力・運動能力の低下に加えて、「靴ひもを結べない」「スキップができない」といった子どもの増加も指摘されています。
何ら不自由のない平常時ならともかく、アウトドアや災害時においては、日頃使っている「便利な道具」がまったく役に立たないケースもあります。日に日に便利になる生活の半面で大規模災害が多発している日本では、こうした「生きるための教育」を後退させるのでなく、より積極的に行っていく必要がありそうです。実際、水難事故への備えとして、服を着たまま泳ぐ「着衣水泳」を指導している学校や、修学旅行で無人島へ出かけて「サバイバル実習」をする学校も出てきています。
今回の茨城県常総市の鬼怒川大規模水害でも、「家族の命を守るためにまずできることは何かを冷静に考えた」とコメントしていた被災男性がいましたが、私たち大人も、日ごろから自分の子どもと非常事態における行動について話し合い、できないことは家庭で訓練しておくことが大切ですね。
<執筆者プロフィール>
井澤佑治(いざわ・ゆうじ) ライター/舞踏家/ダンサー
通販メーカーのコピーライターとして、健康食品などの広告を数多く手がけたのちに、ダンサーとして独立。国内外で公演やワークショップ活動を展開しつつ、身体操作や食事療法などさまざまな心身の健康法を探究する。現在はダンスを切り口に、高齢者への体操指導、障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などにも携わっている。
<参考>
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/attach/1344530.htm
(子どもの体力の現状と将来への影響 文部科学省)
http://www2.schoolweb.ne.jp/swas/index.php?id=0710012&frame=weblog&type=1&column_id=1009667&category_id=8260
(着衣水泳の記録 郡山市立三和小学校)
https://www.zojirushi.co.jp/topics/shougakusei.html
(イマドキ小学生の生活体験に関する調査 象印マホービン)
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