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骨移植の種類 は3つ
3種類の骨移植にはそれぞれ特徴があります。
自家骨移植:
自分の骨を使う方法です。自分自身の骨なので体に馴染みやすいというメリットがあります。拒絶反応が出ずに体に馴染むことを「生体適合性」といい、骨や人工物を移植する上でとくに重要になる部分です。また、骨移植の場合、移植後に周辺の骨に同化し、異物として残り続けないことも重要です。骨と同化する性質を「吸収置換性」といい、自家骨移植はこの点でも優れています。ただし、健全な部分から骨を採取するため、痛みを伴います。手術時間も骨を採取する手術とこれを移植する手術の両方が必要なため大がかりなものになり、体への負担も大きくなります。また、欠損部分が広範囲におよぶ場合、自分の骨だけでは補いきれません。
人工骨移植:
金属、ポリマー、セラミック、リン酸カルシウムなどから作られる人工の骨を用いる方法です。必要なときに必要な量を使うことができるのが大きなメリットです。欠損部分が大きくても対応でき、医療現場で素早い治療が求められる状況にも適しています。患者自身の骨を採取する必要がないので手術にともなう負担は軽減します。体に馴染むかどうかについては自家骨移植に劣りますが、現在では生体適合性や吸収置換性を向上させる研究が進められており、今後を期待された分野といえます。
他家骨移植:
他家骨移植はドナーから提供された骨を用いる手術で、「同種骨移植」とも呼ばれています。骨に関しては、臓器の場合の臓器移植法に相当する法律がありません。そのため、骨の提供に関しては日本組織移植学会のガイドラインに沿って行われ、「骨バンク」として保存されます。遺体から採取された骨はマイナス80度で3か月以上の冷凍保存と、温水による10時間の加温処理によって拒絶反応を抑えています。他家骨移植は移植後に自分の骨に置き換わる吸収置換性を持っています。体に馴染みやすく、骨の採取にともなう患者の負担を抑えられるという利点がありますが、日本ではあまり行われていないのが現状です。
私たちは将来、事故や病気によって骨を失っても骨移植というかたちで現代医療の恩恵を受けられる可能性があります。現在主流の自家骨移植以外に、人工骨移植の進歩にも期待できます。骨バンクに関しては、その存在を知らなかったという人も多いのではないでしょうか。残念ながら骨バンクは普及していないのが現状です。まずは、そのようなものがあることを知り、関心を持つことが普及のきっかけとなり、将来の医療の選択肢を広げることにつながると考えられます。
<参考>
十朱幸代くるぶし大手術告白 5カ月入院&半年間車いす生活
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150921-00000105-spnannex-ent
同種骨バンク(東京医療センター)
http://www.ntmc.go.jp/p_other/contents/123.html
監修:坂本 忍(医学博士)
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