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自分でできること・できないこと
CさんやDさんのような例は、実際の心理相談の場面でもよく見かけるものです。時には、両方が混じったかのような人もいます。依存と自立の間を現実的に扱うためのひとつの切り口として、「自分でできること」と「自分ではできないこと」の区分があります。もちろん、その区分は固定的なものではなく、人や状況によって多少の揺らぎのあるものです。
Cさんに対して、やみくもに「頑張れ」と言うと、無茶をしたり、自分はまだ頑張りが足りないんだと落ち込んだりするかもしれません。また、Dさんに対して「自分のペースでいいよ」と言うと、頑張らないことで自分でも達成感が感じられないような虚しさを助長してしまう可能性があります。
まずは、「何ができそう?」「何が難しい?」「何ができたほうがいいと思う?」──など問うことで、現実的にできること・できないことを確認してみましょう。そのうえで、例えば「お願いする練習をしよう」「これだけは自分で取り組んでみよう」などと具体的な取り組み方を考えることで、これまでとは違う一歩を踏み出せるかもしれません。
ポジティブな依存のためには自立が必要
依存は、「自分には無理」という諦めの気持ちや、虚しさを招いてしまいがちです。そうではなく、「人にお願いできて助かった」、あるいは「これってお互い様だよな」と思えるような良い依存の関係を作りたいものです。
それには、自分でやり遂げる達成感や、自分でできるという自信につながる自立が伴っていることが大切です。その点で、互いの足を引っ張り合い、最終的に双方にとって悪い結果しか導かない「共依存」の関係とは異なります。
皆さんも、「依存」と「自立」の間、「自分でできること」と「自分ではできないこと」の間を、一度確認してみてはいかがでしょうか。
<執筆>
●玉井 仁(たまい・ひとし)
東京メンタルヘルス・カウンセリングセンター カウンセリング部長。臨床心理士、精神保健福祉士、上級プロフェッショナル心理カウンセラー。著書に『著書:わかりやすい認知療法』(翻訳)など
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