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サリーとアンの課題:心の理論
あなた自身に発達障害の傾向があるのかどうか、見分ける一つの方法として、「サリーとアンの課題」があります。
次の文章を読んで答えてください。
・部屋にサリーとアンの二人がいます。
・サリーはおやつのパンを自分の「バスケット」に入れてから、部屋を出ていきました。
・すると残ったアンは、サリーの「バスケット」からパンを取り出して自分の「箱」の中に入れたあと、部屋を出ました。
・さて、部屋に戻ってきたサリーはパンを「バスケット」と「箱」のどちらから取り出そうとするでしょうか?
あなたの答えはどちらですか?「バスケット」でしょうか「箱」でしょうか?
自閉症の子どもの多くは、「箱」だと答えるそうです。
サリーの立場(=相手の立場)に立ってみると、答えは簡単です。アンが箱にパンを入れ替えたのを見ていませんから、正解の「バスケット」と答えられます。ところが、自閉症の子どもは、相手の立場に立つということがわからないので、自分がみたままの事実、つまり「箱」だと答えるというのです。
よく発達障害者は「空気を読めない」、状況に応じた柔軟な対応ができない、相手への配慮ができずに、終始、自分のペースを貫くなどといわれるのは、こうしたことが影響しているでしょう。
ちなみに、相手の心を推測する機能は「心の理論」と呼ばれています。
発達障害か非定型発達か
発達障害というと、何か「遅れている」「劣っている」というイメージがつきものです。
実際、最近注目されてきた大人の発達障害は、職業や日常生活など社会生活に適応できずに、さまざまな失敗や、周囲への迷惑をかけていることが、診断法が発展したことで「発達障害」だと判明してきた結果でもあるでしょう。また、高度情報社会・高度組織化社会では、こうした人たちがいちばん取り残されて目立ってしまうのかもしれません。
そもそも、人の発達は一人ひとり違うというのが現実ではないでしょうか。
みんなと同じに同じペースで発達していく「定型発達」だけがよいというのは、発達もまた、一人ひとり個性的であるということを認めないことになるでしょう。
「発達障害」と呼ぶのか、「非定型発達」と理解するのか、今後、議論の輪が拡がれば良いと思います。
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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