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幻聴への対応:本人にとってはリアル?
「対象なき知覚」として、聞こえないはずの声が聞こえているわけですから、周囲の人は「何をおかしなことを言っているのだ!」と思いがちです。
しかし、本人にとってはすごく「リアル」な経験なので、周囲の人が経験していないからといって「そんなことありえない!」と当人の幻聴を否定すると、本人は孤立してしまいます。
その結果、症状や病態が重症化することもありえます。
昨今、幻聴を含めた幻覚は、上に挙げた精神疾患だけでなく、認知症などでも起きていますので、以前と比べると、幻聴をはじめとする幻覚は身近なものとなっているでしょう。
とはいえ、本人にとって幻聴の対象となる「コトバや声」がいかにリアルであっても、それは、実際には存在していないコトバや声なので、「そうだね」と肯定することもよくありません。
しかし、周囲の私たちには聞こえなくても当人にはリアルに聞こえていることを想像するのは、そんなに難しくないかと思います。
「もし、そんな声が聞こえているなら、とってもつらいだろうな」とか、「自分が人からそんな風に悪口をいわれたらとても悲しい」と、相手の立場を思いやることが可能だということです。
そして、「そう、そんな声が聞こえているならつらいね」「そんな風に言われていると感じるなら悲しいね」と、共感を示すことはできると思います。
その共感こそが、本人を孤立から解放することになり、癒しを与えることにもつながるでしょう。
医師は治療によって、結果的に幻聴などの症状がなくなっていくように関わります。
それにたいして、周囲の家族や友人・知人は、共感的接触によって、本人が幻聴という症状をもった病気で苦しみながら、たった独りぼっちで戦っているわけではないという安らぎを得るよう、寄り沿えうことが症状の改善には重要です。
【参考】
落合 慈之『精神神経疾患ビジュアルブック』学研、2015
樋口 輝彦他 編集『今日の精神疾患の治療方針』医学書院、2013
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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