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3種類の汗
汗が出るきっかけとなるのは、次の3つの場合があります。
その1:温熱性発汗
暑いときや運動をしたときなどに、上昇した体温を下げるための汗のことです。いわば体温調節のためにかく汗で、手のひらや足の裏を除く全身で汗をかき、エクリン腺から汗が出ます。
外の気温が上昇したり運動をしたときは、体温や肌の表面温度が上がります。
すると、脳の視床下部は体温が上昇したという情報をキャッチして、エクリン腺に汗を出すように指令を出します。
ちなみに、暑いときに激しい運動をすると、1時間に2リットルもの汗をかくといわれています。発汗によって体温の上昇を防いでいるのです。
その2:味覚性発汗
香辛料が効いた辛い物やすっぱいものを食べると、額や鼻に汗をかきます。
これは、辛さやすっぱさが刺激となって発汗神経に反射的に起こる現象です。
ですから、食べ終わると汗も引いていきます。味覚性発汗もエクリン腺から汗が出ます。
その3:精神性発汗
人前に出て緊張したり、驚いたときなどに出る汗です。ストレスや緊張など精神的な刺激によってかく汗といえます。
不安などの精神的・心理的な要因によって自律神経の交感神経が活発になって発汗します。
精神的発汗は「手に汗をかく」とか「冷や汗をかく」などと表現されます。汗が出る部位は「手のひら」「足の裏」「脇の下」「額」などの限られた場所で、短時間に発汗するのが特徴だとされています。
ワキガ臭はアポクリン腺から、その他の汗はエクリン腺から出ます。
冷や汗と病気
冷や汗はショックを受けた瞬間に交感神経の作用によって血管が収縮し、その刺激で汗腺から汗がにじみ出ることで起こります。
温熱性発汗と違って皮膚の表面が冷たく、鳥肌や寒気を伴っているので「冷たい汗」と感じます。
上に挙げた精神的発汗の場合に起こりますが、それ以外にも、身体に何か病気が潜んでいるときに出ることが知られています。
どんな病気があるか、おもなものを次に挙げてみました。
熱中症の初期症状
熱中症にかかると、身体は体温を下げるために皮膚の血管を拡張させて、熱を放出しようと作用します。その結果、血圧や脳の血流が下がって、冷や汗が出ます。
起立性低血圧(脳貧血)
いわゆる「立ちくらみ」が脳貧血です。立ち上がるときに自律神経をコントロールできなくなり、血圧が降下して脳貧血が起こると同時に、自律神経が緊張して、冷や汗がふきだしたり動悸がしたりします。
低血糖症
糖尿病患者の血糖降下剤が効きすぎたり、健康な人が食事を抜いて運動をしたりすると、血糖値のコントロールが間に合わなくて、血糖値が低くなりすぎるのが「低血糖症」です。
糖が不足することによって急激な空腹や不安が起こり、神経伝達物質の「カテコールアミン」が交感神経を興奮させて、冷や汗や震えが起こります。
甲状腺機能亢進症
新陳代謝を促進する「甲状腺ホルモン」が過剰に分泌することで、甲状腺機能亢進症が起こります。
甲状腺ホルモンが交感神経を緊張させ、暑くないのに冷や汗をかかせたり大量の汗を出させたりします。
メニエール病
耳の奥の「内耳」に過剰にリンパ液がたまり、いわば、水膨れ状態になるのが「メニエール病」だといわれます。視界がグルグル回るめまいと一緒に冷や汗がでます。
これは、自律神経のバランスが乱れて、自律神経失調症状が起こり、発作を起こして吐き気や冷や汗をともなうためと考えられています。
無痛性心筋梗塞
高齢者や糖尿病患者に起こりやすい「無痛性心筋梗塞」。痛みのない心筋梗塞で、寒気や冷や汗だけが自覚症状です。
心筋梗塞の冷や汗は、生命を脅かすショックによる緊張性の発汗だとされています。
これによって心臓の血液循環が滞るので、皮膚にある毛細血管が収縮する刺激から、汗腺の汗が絞り出されます。
冷や汗は心身の危機状態のサインということでは共通しています。精神性発汗の場合はリラックスしたり落ち着くことが大切です。
また、病気のサインの場合は受診をするなど、身体のケアをする必要があるという「しるし」です。
【参考】
花王株式会社 汗ケアラボ『汗の基礎知識』(http://www.kao.co.jp/8x4/lab/article02/)
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお・かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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