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風邪に抗菌薬は効果なし!
「抗菌薬」は細菌が原因となる病気の治療薬として研究・開発されました。
ですから、対象となる細菌を壊すことはできても、ウイルスには全く効きません。
インフルエンザにはタミフルなどの抗インフルエンザ薬が知られていますが、これは「抗菌薬」とは違うものです。
現状ウイルスに効果を発揮する薬の種類は少なく、たとえば風邪の諸症状を緩和する薬はあっても、実際は自分で免疫力を高めて治すしかないのです。
すなわち、抗菌薬を使用するのは、病気の原因となる細菌が明確な場合のみ、ということができます。
正しく使えばとても有益な抗菌薬ですが、「とりあえず抗生剤」という安易な認識で薬に頼り過ぎる、患者の自己判断で使用を止める…などの使用法が蔓延した結果、世界的に見て深刻な事態に陥っているのです。
抗菌薬が効かない事象が多発!
今や病気の治療には欠かせない存在となっている抗菌薬。
しかし今、「薬剤耐性(AMR)」を持つ細菌、つまり、従来の抗菌薬が効かない細菌が世界中で増えています。
薬剤耐性はどのようなメカニズムで起こるのでしょうか。
細菌は、敵である抗菌薬に対してなんとか自分の身を守ろうとします。
たとえば、薬の影響を受けにくいように変化する、薬を分解するような機能を持つなど、抗菌薬への耐性を持とうとして強くなるのです。
また、前述のとおり、身体には病気を招く細菌だけではなく、さまざまな細菌が住みついています。
しかし、抗菌薬の使用により問題のない細菌が減少して全体のバランスが崩れ、薬剤耐性を持つ細菌が増えやすい環境を作ってしまいます。
こうして抗菌薬が効かない細菌が増加すると、病気の治療が困難になり、重症化する危険性が高まります。
さらには、健康な人では問題にならない細菌でも、幼い子どもや高齢者、妊娠中の人、持病のある人など、免疫力の弱い人にとっては、命の危険を脅かす事態になりかねません。
実際、薬剤耐性を持つ細菌が原因で命を落とす人は世界中で増え続け、AMR臨床リファレンスセンターは、2050年にはその数が年間1,000万人に及ぶと予想して警鐘を鳴らしています。
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