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認知症と暴力 レビー小体型認知症にみられる妄想
誤りであることを指摘しても訂正することができない間違った考えを「妄想」といいます。認知症の患者さんは、「ものを盗まれた」「のけものにされた」「浮気された」といった妄想を抱くことがあります。認知症にはさまざまなタイプがありますが、中でもレビー小体型認知症では妄想が主症状となっており、約8割の患者さんに認められるといいます。妄想に由来する怒りが暴力行為に発展しそうなときは、部屋を移動するなど、一時的に距離をとって落ち着くのを待ちます。しかし、脳の神経細胞の変性に由来する妄想は、対応の仕方で改善に導くことは困難です。医療現場では副作用に留意しつつ、抗パーキンソン剤や抗精神病薬が用いられます。
認知症と暴力 対抗せずに離れるのが基本
認知症にともなう暴力行為は、本人が真実と思い込んでいる妄想を原因としていることが少なくありません。しかし、「貴方は勘違いしている」「嘘をついているのは貴方の方だ」というように対抗しても、本人の自尊心を傷つけ、かえって怒りを助長してしまいます。
興奮状態のときは説得するよりも距離をとることが基本とされています。ヘルパーさんなど、一時的に家族以外の人が介護することで興奮が収まることもあります。
怒りやすい、暴言・暴力をふるう、といった問題が老化に由来するものなのか、病気に由来するものなのかの区別は容易ではありません。レビー小体型認知症の例もあるように、介護者の対応で改善するのかしないのかの判断も困難です。「物忘れ外来」や「認知症外来」というかたちで、認知症に関する検査、治療を行っている医療機関もあります。そこでは対応の仕方についてアドバイスをもらったり、必要な場合に薬の処方を受けることができます。介護中の暴力に悩んでいる方は、専門家のいる医療機関の受診を検討しておきましょう。一方で、介護をする側の心構えとして、幼児言葉を使う、下にみるような態度をとる、といった介護を受ける人の自尊心を傷つける行動を慎むことが大切です。
執筆:斉藤雅幸(Mocosuku編集部)
監修:岡本良平医師(東京医科歯科大学名誉教授)
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