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更年期の病気と対処法 :腹圧性尿失禁=尿漏れ
お腹に力がかかって膀胱が圧迫され、尿道がしっかり閉じられないことで起こる腹圧性尿失禁を尿漏れといいます。更年期以降の尿漏れには、いくつかの原因があります。
閉経によりエストロゲンの分泌量が減少することで、尿道や膣の血液量が減少し、全身的にも新陳代謝が低下します。
また、エストロゲンとは直接関係ありませんが、骨盤内の臓器を支える筋肉も衰え始め、支持力が低下します。このような様々な変化により、尿道や膀胱の機能が不安定になり、頻尿、膀胱の違和感、尿漏れなどがみられるようになります。
さらに、出産を経験した女性は、分娩で骨盤底の筋肉や線維組織などを損傷していることがあり、性器脱(膣の入り口から子宮や膣壁が脱出している状態、子宮が裏返って脱出している状態を特に「子宮脱」といいます)を起こすことがあります。すると子宮や膀胱を支えていることが難しくなり、尿漏れを起こすのです。
尿漏れへの対処法
セルフケアとしては、骨盤底筋トレーニングがあります。まず、肛門と骨盤底筋全体を、おならを我慢するようなイメージで締めてみます。
この時、肛門括約筋(肛門のまわりの筋肉)が固くなっていれば、骨盤底筋も一緒に動いています。これが基本動作です。仰向けに寝て足を肩幅に広げ、膝をたてます。そのまま身体の力を抜き、5つ数えながら骨盤底筋をゆっくりと締めます。そのまま5秒間キープし、その後はゆっくりと力を抜いてリラックスします。
これを10回で1セット、毎日行います。骨盤底筋トレーニングは尿漏れ対策としてだけではなく、ヒップアップ効果も期待できますのでおススメです。
更年期の病気と対処法 :乳がん
閉経と乳がんが直接関係しているわけではありません。
ただし、更年期障害の治療の1つとして行われるHRTにより乳がんリスクが高くなることが分かっており、HRTを行わない女性と比べ、1.26倍ほどリスクが高いといわれています。この場合に発症する乳がんは、早期発見できれば予後が比較的良いタイプであることが多いのですが、やはり定期的な検診が必要です。
乳がんになるリスクには他にも、出産経験が無い、乳がんになった家族がいる、肥満である、糖尿病に罹ったことがある、などもあります。HRTも乳がんのリスクにはなりますが、これらのリスクほど高いものではありません。HRTをしているいないにかかわらず乳がん検診は大切なので定期的に受けるようにしましょう。
乳がんへの対処法
早期発見がもっとも大切です。
乳がんはセルフチェックで見つかることも多い病気で、およそ5~6割はセルフチェックでみつけた、というデータもあります。まずはセルフチェックのやり方を覚えましょう。
1.お風呂上りに鏡の前に立ち、両腕の力を抜いて身体の脇にたらし、左右の乳房の形や大きさの変化、乳輪から乳首周囲の皮膚のへこみやひきつれ、ただれなどをチェックします。
2.両腕を高く上げて、先ほどと同じことをチェックします。
3.仰向けに寝て、乳房の内側、乳房の外側、わきの下、乳頭などをくまなく触れながら、しこりや「いつもと違う感じ」があるかどうかをチェックします。
閉経後であれば毎月同じ日に、閉経前であれば生理が終わってから5日目くらいを目安に、月に1度はセルフチェックを行う習慣を身に付けましょう。特にHRTを受けている、あるいは他のリスクに心当たりがある場合は、セルフチェックは乳がん早期発見のために重要です。
また、セルフチェックだけでは見つけられない乳がんもありますので、医療機関や健保保険組合、自治体などでの乳がん検診を定期的に受けておきましょう。
<監修者プロフィール>
太田 郁子(おおた・いくこ)
倉敷平成病院婦人科医長、医学博士、日本子宮内膜症啓発会議実行委員
<執筆者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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