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先端恐怖症について
「尖端恐怖症」と表すこともある先端恐怖症は、「尖ったもの」「鋭いもの」に異常に恐怖心を感じる症状です。
先端恐怖症は、次のようなものが恐怖の対象になるようです。
・ナイフ ・カッター ・包丁
・ねじ ・キリ(錐) ・針
・トゲ(棘) ・鉛筆やボールペン ・傘
・箸やフォーク ・指 など
これらが眼前に迫ったとき、先端恐怖症の人でなくても「怖い!」と感じるのは自然な反応でしょう。
しかし、限局性恐怖症の定義では、こうしたものに「過剰な恐怖心をもって」「生活に支障をきたす」といった状態にまでなることが、診断の根拠となります。
たとえば、元プロレスラーでタレントの佐々木健介さんは、公式ブログ(※)で自身が先端恐怖症だと告白しています。
そのブログの中で、コーヒーショップでアイスコーヒーにストローが刺さっていると飲めないので、店員さんに頼んで曲がるストローに変えてもらうというエピソードを紹介しています。
これを病気といえるかどうかは別としても、一般の感覚からすると「極端=過剰」と捉えられるでしょう。
恐怖症の人たちは、普段の生活では恐怖の対象を避けて生活をしています。
しかし、どうしても避けられない場面に遭遇したとき、恐怖症であることがハッキリします。
たとえば、「高所恐怖症」の営業マンが、得意先が高層ビルの最上階にあって訪問できない…といった事態に陥ったとしましょう。
これが繰り返されれば生活や仕事に支障が出ますから、治療を要する病気かもしれない、という自覚を促します。
恐怖症の治療
恐怖症の発症は、幼いころに経験した恐怖がトラウマとして残っている、もしくは、たまたま経験した恐怖がきっかけとなる、という要因が指摘されています。
どちらの要因にせよ、結果として不安が強くなり、仕事や生活に大きな支障が出ると不安障害の治療を受けることができます。
病気への理解を深める「心理教育」、認知行動療法などの「心理療法」、不安や抑うつ症状が強ければ「薬物療法」などが用いられます。
また、暴露療法といい、あえて恐怖の対象を軽いものから段階的に経験して慣れていくという治療法もあります。
さらに、怖さや不安が高じることに対しては「リラクゼーション」も効果的とされています。
限局性恐怖症の人は、怖い思いをした場所やモノに近づかないという回避行動をとり、かろうじて生活に支障がないように折り合っている人が多いといいます。
そのため、一般に認知されづらい側面も抱えているでしょう。
そのような状況ではありますが、女性の方が発症率は高い、小児期と20代半ばの2つの時期に発症ピークがあるなど、疫学的なデータも報告されています。
怖い対象を避けて生活や仕事をする、というのは大変な心労です。
私たちもこの恐怖症という症状を理解し、認識する必要があるでしょう。
【参考】
・樋口輝彦 他/監修『今日の精神疾患 治療指針』(医学書院 2013年)
※デイリースポーツ『佐々木健介、先端恐怖症を告白「アイスコーヒーを頼む時は曲がるストロー」』(https://www.daily.co.jp/gossip/2017/06/14/0010282192.shtml)
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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