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水中で錐体内出血が起きる理由
溺死した人の多くに錐体内出血が起こっていることを発見した上野医師。
その理由を次のように推定しています。
水泳中に息継ぎのタイミングを誤るなど、何らかの原因で耳管(鼻と中耳を結ぶ細い管)の中に水が入ってしまうことがあります。
そうすると、鼻に水の「栓」が生じます。
加えて、水を飲み込もうとする運動(嚥下運動)などによって、この水の栓はピストン運動を起こします。さらに、外耳からの水圧などの影響も加わって、「鼓室(こしつ)」の内圧が急変する事態を招いてしまいます。
鼓室とは中耳のメインとなる部分で、鼓膜の内側にあり、耳小骨が収まっている空間のことです。鼓室の内圧が変化すると、その隣にある「乳様突起」の内部も影響を受け、毛細血管が破綻して錐体内出血を起こすと推定されています。
なお、乳様突起とは側頭部の骨の後下方にある大きな突起のことです。
乳様突起は耳の後ろにあり、体表からも指で触れて確認できます。突起の内部は「乳突蜂巣(にゅうとつほうそう)」と呼ばれる多数の小さな空洞で占められていて、これらの空洞は互いに迷路状につながって、最終的には鼓室の上部に連絡しています。
錐体内出血が溺死にいたる理由
以上のような理由で錐体内出血が起こった結果、錐体の内部にある三半規管が急性循環不全を起こし、その機能を極端に低下させ、平衡感が失われて「めまい」が起こります。
そして、この症状(=めまい)が水中で起こることによって、泳ぎが達者であるにも関わらず、また、十分に背が立つ浅瀬であっても、溺れて溺死する可能性があるというのが、上野医師の指摘するところです。
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