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飲酒時の暴れ方がエスカレート
さらに、この時期のSさんは、お酒を飲むと以前にも増してささいなことで激昂するようになっていました。
たとえば、Sさんの妻が職場での出来事を話しただけで、Sさんは「働いていない俺へのあてつけか!」と怒鳴り、物を投げたり壊したりするのです。物へのあたり方も、テーブルをひっくり返したり、茶碗やお皿をいくつも投げて壊したりと、どんどんエスカレートしていきました。Sさんはかろうじて、妻に手をあげることはしていませんでしたが、これは立派なDVといえるでしょう。
しかも、Sさんは自分が暴れたことを、朝になるとまったく覚えていないのでした。
意を決して 心療内科 へ、しかし…
Sさんの妻は、「このままではいつか自分も暴力をふるわれる」と不安になり、Sさんに専門医を受診するよう懇願しました。Sさんも、記憶を失くしているときの自分の行動を妻から聞いて恐ろしくなり、今度は素直に家からいちばん近くにある心療内科に出向きました。
ところが、 心療内科 の診察室で現在服用している薬をすべて医師に見せ、自分の症状を説明したところ、Sさんは医師から思いがけないことを言われました。
「こんなに強い薬をデタラメに飲んで症状をこじらせた人は、申し訳ないけどウチでは治療できません」
医師からそう言われて、Sさんは 心療内科 の通院を断られてしまったのです。
(次回に続く)
※本文は実話をもとに脚色を交えて構成しています。実在の人物・団体とはいっさい関係がありません。
<執筆者プロフィール>
井澤佑治(いざわ・ゆうじ)コラムニスト
舞踏家/ダンサーとしての国内外での活動を経て、健康法・身体技法の研究、高齢者への体操指導、さまざまな障がいや精神疾患を持つ人を対象としたセラピー、発達障害児の療育、LGBTの支援などに携わる。
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